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【法改正等対応版】建設工事の種類と建設業許可、複数業種で許可を受けるには

2020.12.24更新 10月1日の建設業法改正等を反映して内容を微調整しました。




元請から建設業の許可取れって言われてるんですけど、よくわからないんで教えてもらえます?


はい、よろこんで。
まず、許可が必要な業種って決まってますか?


建設業許可の29業種(一式工事と専門工事)


請け負う建設工事の種類と必要な建設業許可


業種ですか?
いや……そのへんも含めて教えてもらえます?


もちろん、もちろん。
じゃあ、普段はどんな工事が多いんですか?


外壁の補修がほとんどですね。たまにマンションの屋上とかもやりますけど。


なるほど。
そうなると、狙う業種は塗装か防水になりそうですね。または両方か……。
ちなみに、独立してから何年くらい経ってます?


5年とちょっとですね。


でしたら、まずは塗装か防水のどちらかですね。許可を受けられる可能性が高いですね。
元請さんからは、どっちかって言われてます?


うーん、とくにないですね。
とりあえず、許可があれば大きな工事も回してもらえるって話になってます。


なるほど、なるほど。ちゃんとした元請さんですね。
許可がない業者には500万円以上の工事を出せないんですよ。


そんな話ですね。


それでですね、扱う工事の種類によって必要な許可も違うので、それを確かめたかったんです。


附帯工事の考え方


ってことは、結局は塗装と防水の両方を取らないと、500万円以上の工事はできないんですかね?


いやいや、「附帯工事」という考え方があって、メインが塗装工事で防水はその下処理みたいな感じだったら、塗装の許可だけで大丈夫なんですよ。
ようは、附帯工事は許可がなくても施工できるんですね


じゃあ、防水より塗装のほうがいいんですかね?


あ、逆に防水工事が目的で、塗装は見た目をよくするためだけの処理とかだったら、防水の許可が必要になるでしょうね。


なるほど。
そう考えると、うちは塗装になりそうですね。


じゃあ、塗装の許可を前提に話を進めますね。


一式工事と専門工事


ええ。
ちなみに、塗装と防水の他には、どんな種類があるんですか?


大工工事とか電気工事とか、工事の種類によって全部で29業種あります
こんな感じですね。
 

【参考】建設工事と建設業の種類

出所:建設業許可 手引、申請書類等(東京都都市整備局)/建設業許可事務ガイドライン(国土交通省)を基に作成

建設工事の種類建設業の種類代表的なもの
1土木一式工事土木工事業道路や橋、ダムの建設
2建築一式工事建築工事業建築確認が必要な新築・増改築
3大工工事大工工事業大工、型枠、造作工事
4左官工事左官工事業こて塗り、モルタル吹きつけ
5とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業基礎、足場、くい打ち、土留め
6石工事石工事業ブロック積み、間知石積み
7屋根工事屋根工事業屋根ふき、太陽光パネル設置
8電気工事電気工事業引込線、構内電気設備工事
9管工事管工事業給排水衛生設備、空調設備工事
10タイル・れんが・ブロック工事タイル・れんが・ブロック工事業タイル張り、サイディング工事
11鋼構造物工事鋼構造物工事業鉄骨加工組立工事
12鉄筋工事鉄筋工事業配筋、組立、継手工事
13舗装工事舗装工事業アスファルト舗装、人工芝張付け工事
14しゆんせつ工事しゆんせつ工事業しゅんせつ、河川整備工事
15板金工事板金工事業デッキ、外壁鉄板取付け工事
16ガラス工事ガラス工事業ガラス加工取付け工事
17塗装工事塗装工事業塗装、布張り仕上工事
18防水工事防水工事業シーリング、シート防水工事
19内装仕上工事内装仕上工事業内装リフォーム、クロス張り
20機械器具設置工事機械器具設置工事業昇降機設置、立体駐車場建設
21熱絶縁工事熱絶縁工事業冷凍冷蔵設備、断熱工事
22電気通信工事電気通信工事業電気通信機械、放送機械設置工事
23造園工事造園工事業植栽、公園設備、屋上緑化工事
24さく井工事さく井工事業井戸掘り、天然ガス掘削工事
25建具工事建具工事業サッシ、自動ドア取付け工事
26水道施設工事水道施設工事業配水本管布設替工事
27消防施設工事消防施設工事業火災報知器、スプリンクラー設置工事
28清掃施設工事清掃施設工事業ごみ処理施設工事
29解体工事解体工事業工作物解体工事



へえ。細かく分かれてるんですね。
……ちなみに、この「建築一式」っていうのを取れば、塗装も防水もできるようになるんですかね?


いやいや、建築一式と土木一式だけはちょっと特殊で、下請さんをまとめる現場監督みたいなイメージなんですよ。
なので、建築一式の許可しか持っていない業者さんだと、自分たちでは500万円以上の塗装工事とか防水工事は請けられないんですよね


へえ。


施主さんから注文を受けて元請になって、専門工事業者の基礎屋さんとか大工さんを手配して工事を完成させるのが、建築工事業者の役割ですね。
なんで、建築一式工事の下請っていうのは、基本的にはあり得ないんですよ

 



じゃあ、施主さんから仕事もらって、足場屋の手配とかも自分たちでやる場合は、建築一式の許可が必要になるんですか?


うーん、それだと普通の塗装工事でしょうね。
建築確認が必要な新築や増改築っていうのが、建築一式の原則みたいです


なるほど、それだとあんまり関係ないかな……。


将来、新築一棟を請け負うような可能性が出てきたら、そのときに考えればいいと思いますよ。


ですね。
じゃあ、塗装で許可を取るとして、これからどうすればいいんですかね?


建設業の許可を受けるには


単独の業種で建設業許可を受けるには


資料を集めて建設業の許可申請をするんですけど、その前に必要な条件がそろっているかどうか、いくつか確認させてもらえますかね。


ええ、お願いします。


独立してから5年ちょっとって話でしたが、最初から会社だったんですか?


いや、最初は個人でしたよ。
たしか2年目で会社作って、もうすぐ会社の4期目が終わるところですね。


なるほど。
個人のころの確定申告書って残ってます?


ええ、レシートとかも全部取っておいてありますよ。


おお、助かりますね。
ちなみに、最初から塗装工事がメインでしたかね?


そうですね。ほとんど塗装だと思いますよ。


最初のころの請求書とか通帳とかって、取っておいてあります?


ああ、そのへんは個人のころから全部そろってます。


そうなると、経営経験のほうは大丈夫そうですね。
申請する業種、つまり塗装工事の業者を5年以上経営している人建設業の経営経験が5年以上ある人がいないといけないんですよ。2020年10月1日より前は「経営業務の管理責任者」と呼ばれていたんですけど、今は「常勤役員等」という言い方をします。


なるほど。


ちなみに、「塗装3年と大工2年で合計5年とかではダメなんで、請求書の工事件名なんかもポイントになってきます。などでもよいので、とにかく建設業の請負を業として営んできた経験が5年以上求められるんですね。


うーん、「外壁改修工事一式」って書いてあって、中に「下地補修」とか「塗装」とか書いてある感じなんですけど、大丈夫ですかね?


塗装工事って説明できれば大丈夫なはずですよ。
そのへんは後で詳しく確認させてもらいますね。



了解です。


あと、専任技術者っていうのも必要になるんですけど、塗装系の技能士か施工管理技士って持ってます?


いやあ、そのうち取ろうと思っているうちに、ここまで来ちゃいましたね。


従業員さんで、持っている人とかっていないですか?


若いのが2人いますけど、どっちも技能士とかは持ってないですね。
2人とも職人になって3年くらいですし。


なるほど。
そうなると、社長の実務経験で行くことになりそうですね。
……独立する前って、やっぱり塗装屋さんに勤めてたんですか?


ですね。
7年くらい働いてから独立したんですよ。
今でもそこからたまに仕事もらってますよ。


そこって塗装の許可あったかどうかわかります?


たぶん持ってると思いますよ。
結構でかい工事もやってましたし。小学校の外壁とか。


じゃあ、大丈夫そうですね。
そのころって厚生年金とか入ってました?


そうですね。
年金はかけてもらってましたよ。


おお、それでしたら、実務経験の証明はそこまで苦労しなくて済みそうですね。
ちなみに社長、工業高校出てたりしません?


いやあ、普通の高校でしたよ。
工業だと違うんですか?


ええ。卒業した学科によっては、実務経験が5年で済む場合もあるんですよね。
社長の場合は独立してからの経験も合わせて10年でいけそうなんですけど、5年で済めばもっと楽だなと思いまして。うちの報酬も安くて済みますし。


へえ。
まあ、許可が取れるんだったら、それでいいですよ。


そうですよね。
いずれにせよ、塗装工事の許可は狙えそうですね。
請求書とかを詳しく調べてみないと、確かなことは言えないですけど。


そうですか。
ちょっと安心しました。


私もです。


複数の業種で建設業許可を受けるには


じゃあ、ついでと言ってはなんですが、塗装工事だけでなく防水工事の許可も受けられるようになる条件も説明しておきますね。
必要になるときが来るかもしれないので。


ええ、お願いします。


まずですね、2つ以上の業種で許可を受けるとなると、経営経験が6年必要になります。経営経験については、5年以上あれば大丈夫です。


塗装6年と防水6年てことですか?


あ、いや、合計で6年あれば大丈夫です。
しかも、内訳はなんでもいいので、もちろん塗装5年と防水1年でもいいですし、塗装3年と防水3年とかでもいけますね。
あと、塗装だけで6年でもOKです。



じゃあ、もう少ししたら両方取れるようになるんですね。


ええ、経営経験に関しては、6年5年でマックスなんですよ。10年でも20年でも一緒なんです。
で、6年以上になると、5年以上の経営経験があれば、さっきの29業種全部で責任者になれるんですね。


へえ、なんか変な話ですね


まあ、5年と6年で差がありすぎるような気はしますよね。
それはいいんですけど、問題は専任技術者のほうなんですね。


問題ですか?


ええ。
実務経験でいくとなると、一つの業種につき10年の経験が必要になるんですよ
なんで、塗装工事と防水工事の専任技術者になろうとしたら、最低でも20年の現場経験が必要になるんですね。

 



へえ、そりゃあ厳しいですね。


そうなんです。
大手みたいに技術者が何人もいればなんとかなりますけど、なかなかそうはいかないでしょうからね。
ただですね、一人で同時に何業種かの専任技術者になれるような資格もあるんですよ


ああ、そういうことか。


はい。
例えばですけど、二級建築施工管理技士の「仕上げ」を持っていれば、塗装と防水だけでなく、大工、左官、石、屋根、タイル、板金、ガラス、内装仕上、熱絶縁、建具の、全部で12業種の専任技術者になれるんですね。


へえ、すごいですね。


まあ、12業種も扱う業者さんは少ないと思いますけど、「塗装と防水」はもちろん、「屋根と板金」とか、「大工と内装仕上と建具」とか、そのへんを組み合わせて営業している業者さんは、結構あるでしょうからね。


ですね。


なんで、社長にもがんばって建築施工管理技士の2級を取ってもらいたいところですね。
国家資格者がいると、素人目に見ても会社の信頼度が上がりますし


うーん、考えときますわ。
ちなみに、許可を持っている業種が増えると、維持費もそれだけ増えるんですか?


複数許可の維持費と有効期間の調整


いやいや、基本的には、何業種でも維持費は変わらないんですよ
ここで言う維持費っていうのは、5年に1回ある許可の更新のことですけど。


ああ、そうなんですね。


ただですね、最初に塗装工事だけ許可を受けておいて、後から防水工事を追加する場合なんかですと、申請するときの手数料がかかっちゃいますね。


やっぱり。


でも、業種を追加するときだけなんで、まとめて更新しちゃえば手数料は変わりませんよ。


でも、更新の時期って、最初に許可を取った時期によってずれてきません?


おお、鋭いですね。
なんで、業種を追加した場合、追加したほうは5年経ってなくても、前の許可を更新するとき一緒に更新しちゃえばいいんですね。


ん?


ああ、すみません。口で説明してもわかりづらいですよね。
図に描くとこんな感じです。
2015年4月の時点で、防水工事業の許可はまだ有効期間が2年以上残ってるんですけど、先に更新の時期が来た塗装工事業の許可と合わせて、一緒に更新しちゃうんですね。

 



許可の一本化っていうんですけど、これをやっておけば次からは全部の業種を一緒に更新していけるようになるんですね
でもって、東京都とかの知事許可だったら、業種がいくつあっても更新の手数料が5万円で済むわけです


なるほど。
じゃあ、そのへんはあんまり心配しなくてよさそうですね。


ですね。


まとめ


そんなわけで、まとめるとこんな感じでしょうかね。

 

建設業許可の業種
  • 一式工事2業種と専門工事27業種
  • メインで請け負う業種の許可が必要
  • 一式工事だけでは500万円以上の専門工事は不可
  • 技術者の要件を満たせば複数業種での許可も可能



とりあえず塗装の許可を取って、資格を取ったら防水とかも追加していく感じですかね。


ええ。5年の経営経験と10年の実務経験は満たしていそうなので、まずは塗装工事の許可申請ができるように、準備を進めていきましょう。


了解です。


で、資格が取れるころには経営経験も6年を超えているはずなので、たら業種を追加して、もう一段階上を目指しましょう。


わかりました。


補足


29業種は多いか少ないか


29業種ですか……。
建設業許可も、業種はややこしいですね。


労災は何種類なんでしたっけ?


建設事業の保険料率で言うと、9種類ですね。
ちなみに、雇用保険の料率は、建設業なら業種に関係なく一律です。


【参考】労災保険料率(工事開始日が平成30年4月1日以降のもの)

出所:平成30年度事業主の皆様へ(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方(厚労省)

事業の種類労務比率(/100)保険料率(/1000)
水力発電施設・ずい道等新設事業1962
道路新設事業1911
ほ装工事業179
鉄道または軌道新設事業249
建築事業(次段を除く)239.5
既設建築物設備工事業2312
機械装置の組立または据付の事業386.5
機械装置その他216.5
その他の建設事業2415



9種類ですか……少なくていいですねえ。


でも、さらに「事業の種類の細目」に分かれるので、それだと40種類近くになりますね。最初に届け出るときとかに、労災保険率適用事業細目表っていうので調べるんですけど。


へえ、面倒そうですねえ。
でも考えてみると、入札参加資格審査申請の場合だと、東京都の業種は100種類以上になりますもんね。


すごいですね……。


八王子市とか立川市とか、東京都の市区町村も同じなんですけど、塗装工事も「一般塗装」と「橋りょう塗装」に分かれてるんですよ。
あと、特殊工事に「電気防食」っていうのがあるみたいです。申請したことないですけど。


それぞれの工事に専門の業者さんがいるんでしょうね。


解体工事業の追加


ええ。
で、許可の話に戻すと、少し前まで28業種だったんですけど、2016年6月1日に解体工事業が追加されて29業種になったんですよ


へえ。
それまでは誰が解体していたんですか?


とび・土工・コンクリート工事の許可で解体もできたんですよね。
でも、高度成長期に整備したインフラが老朽化していて、その解体工事が増えるだろうということで、必要な技術者とかも見直されることになったみたいです。


じゃあ、解体屋さんは業種を追加しなきゃいけないんですね?


ええ。
施行日から3年の2019年5月末までに業種追加しないと、500万円以上の解体工事が請けられなくなっちゃいますね


やっぱり経過措置はあるんですね。


ですね。
ただ、とび・土工工事業の専任技術者がそのまま解体工事業の専任技術者になれるとは限らないので、早めに相談してほしいところです。


ぎりぎりで相談されて困るケースって、よくありますもんね……。


ええ……。
 

Posted in 許可・経審・入札

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