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特定技能制度で外国人を雇用する際のポイント解説(分野共通)


最近、新聞などで特定技能関連の記事をよく目にするので、詳しく教えてもらえますか。


いいですよ。
前に、外国人雇用について相談された方がいらっしゃいましたけど、あのときは建設現場で外国人を雇う一手段として、特定技能制度を紹介したんですよね。なので、細かい部分はだいぶ省略していたんです。


そうなりますよね。


今回は、実際に企業が特定技能外国人を受け入れるとしたらどんな基準を満たす必要があるのかを中心に、ちょっと詳しく説明してみますね。


お願いします。


まずは建設業に限定しないで、特定技能制度の概要について説明してみます。
まあ、あくまでも概要なので、より詳しく知りたい場合はこの本を読んでみてください。




お、ブレースパートナーズの井出さんとの共著ですね。
さっそく注文してみますよ。
(茶番劇)


特定技能制度とは


まず、前提なんですけど、日本の人手不足は深刻な状況ですよね。


まあ、少子高齢化も進んでいますからね。


我々も採用関連の相談を受けること多いですよ。


でしょうね。
でも、だからといって外国人を雇おうとしても、在留資格の制限があるのでなかなか難しいんですね。

【参考記事】
在留資格の概要と外国人労働者が建設業で働ける就労ビザ



そんな話でしたね。


コンビニや居酒屋で外国人店員を見かけることが増えましたけど、あの人たちの大部分は、たぶん留学生だと思います。で、留学生だとすると、原則として週に28時間までしか働けないんですね。


いわゆるパートタイマーというやつですね。


ええ。
本来は日本の学校に通うために在留しているので、やはりフルタイムでの勤務は難しいんです。


なるほど。


あとは、建設業だけでなく、製造業や農業漁業なんかでも技能実習生が活躍しているんですけど、これはあくまでも実習……つまり人材育成が目的なんですよね。なので、やってもらう作業などには、かなり細かい制限がかけられているんです。


でしたね。


こんな感じでなんとかやってきたわけですが、さすがに余裕がなくなってきたようで、ずばり「人手不足解消」のために新しい在留資格を作ることにしたんです。それが特定技能なんですね。


ほうほう。


ただ、「どんな企業でも外国人を雇用できる」というのは乱暴なので、そこはさすがに、いろいろと細かい基準が定められているんですね。


でしょうね。


そもそもなんですけど、自社の業種が「特定産業分野」というのに該当していないと、特定技能で外国人を呼ぶことはできません。


ふんふん。


「生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野」という言い方をするんですが、制度開始時点で14業種が指定されたんですね。で、それぞれの分野で開始から5年間の受入れ見込み数も定められているんです。合計すると約34万人ですね。
 

(参考)特定産業分野14業種と受入れ見込数(5年間の最大値)
分野受入れ見込み
介護60,000人
ビルクリーニング37,000人
素形材産業21,500人
産業機械製造業5,250人
電気・電子情報関連産業4,700人
建設40,000人
造船・舶用工業13,000人
自動車整備7,000人
航空2,200人
宿泊22,000人
農業36,500人
漁業9,000人
飲食料品製造業34,000人
外食業53,000人

出所:新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)


へえ、入管の手続きを考えると、なかなかの数字ですね。
でも、日本の人手不足って、そんなレベルではないですよね?


まあ、そこは大人の事情があるんでしょうね……。
ともかく、特定技能を大まかに説明すると、「特定の14業種で現場の人手不足解消のために外国人を呼ぶことができる制度」みたいなイメージになりますかね。


わかりました。


特定技能外国人受入れの基準


次に、特定技能で外国人を雇用するためにクリアしなければならない基準を説明しますね。
大きく分けると三つの基準になるんですけど、その中の一つをさらに分けて4項目で説明してみます。


了解しました。


特定技能外国人の基準


まずは受け入れる外国人の基準ですね。
「特定技能外国人」と呼ばれて、在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。


どう違うのですか。


平たくいうと、技能レベルの違いですかね。難しくいうと、1号が「相当程度の知識または経験を必要とする技能」で、2号が「熟練した技能」らしいです。


ふむふむ。


まあ、さすがにそれでは運用に困るので、技能検定を基準にすると、1号が3級レベルで2号が1級レベルになっています。


なるほど。
実際に検定を受けるのですか。


ええ。ただ、いきなり日本人向けの検定を受けるのは難しいので、外国人向けに国外でも実施される試験が設定されるんですね。ちなみに、2号は今のところ「建設」と「造船・舶用工業」分野のみ受入れ予定なんですが、実際に始まるのは2021年以降という話です。


へえ。


あと、1号は日本語能力の基準も定められています。「日本語能力試験(JLPT)」だと下から2番目のN4ですね。または新しくできた「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」で、やはり下から2番目のA2に合格すれば大丈夫です。


ふんふん。


で、この技能と日本語能力の基準なんですけど、技能実習の2号まで修了していると、試験免除になるんですね。もちろん、技能については関連する職種でなければならないんですけど。


では、業種によっては「技能実習の延長」のような扱いになるのですね。


ですね。
あと、1号には「在留期間の上限が通算で5年まで」という基準もあります。
それと、家族を呼んで日本で一緒に暮らせないのも、1号のつらいところですね。


2号は大丈夫なんですか。


ええ。
在留期間の上限はないので、場合によっては永住も見えてくるでしょうね。
配偶者と子どもも呼び寄せられますので、「技能」や「技術・人文知識・国際業務」といった、いわゆる就労ビザと同じような扱いです。


へえ。
やはり、1号から2号にステップアップしていくのですか?


要件を満たせばいきなり2号になることもできるんですが、1号で何年か経験を積んでから2号の試験を受けるような人が増えていくんじゃないでしょうか。


なるほど。


特定技能所属機関の基準


次は受け入れる企業の基準ですね。
こちらは「特定技能所属機関」と呼ばれます。


会社でないといけないのですか。


いや、それはないですね。個人事業主でも大丈夫ですよ。
私はよく「企業」とか「会社」とか言ってしまいますが、限定されているわけではないんですね。
介護事業所だったら社会福祉法人や医療法人が運営していることもめずらしくないですし。


たしかに。


最初に確認しておくべき基準は、先ほども説明したとおり、特定産業分野の14業種に該当するかどうか、という点ですね。
 

(再掲)特定産業分野14業種と受入れ見込数(5年間の最大値)
分野受入れ見込み
介護60,000人
ビルクリーニング37,000人
素形材産業21,500人
産業機械製造業5,250人
電気・電子情報関連産業4,700人
建設40,000人
造船・舶用工業13,000人
自動車整備7,000人
航空2,200人
宿泊22,000人
農業36,500人
漁業9,000人
飲食料品製造業34,000人
外食業53,000人



そういえば、コンビニは入っていませんね。
家電量販店などもインバウンドのお客さんが多いですし、「小売業」などがあってもよさそうですけれど。


このあたりは、いろいろ事情があるみたいですね。
技能実習では縫製業(繊維・衣服)での受入れも多かったのですが、今回の14分野には入っていないですし……。


なるほど。
ここはあまり深入りしないほうがよさそうですね。


ですね。
あと、所属機関の基準としては、「法令順守」がキーワードになってきますかね。


それって、企業として当然のことなのでは……。


まあ、そうなんですけど、一定の法令違反などがあった場合、普通の企業だったら罰金で済むようなケースでも所属機関としては欠格になっちゃうんですよ。


そういうことですか。


とくに厳しいのは入管法や技能実習法といった在留資格に関係する法令と、労働関係の法令に関する違反ですね。あと、暴力団関係なんかは言わずもがなです。


いわゆる「ブラック企業」というやつだと、受入れはできない仕組みなんですね。
税金や社会保険料を適切に納めていない場合なんかも引っかかりますよ。


でしょうね。


他には、「外国人に対する支援を適切に行えるかどうか」という基準もあります。


「支援」て、どんなことするのですか。


これは1号に限った話なんですが、日本での生活に慣れていない外国人に対して、空港への送迎や日本語習得といった、支援が必要な項目が列挙されているんですね。
 

(参考)1号特定技能外国人に対する支援項目
  1. 事前ガイダンス
  2. 空港等への送迎および見送り
  3. 住居の確保および生活に必要な契約
  4. 生活オリエンテーション
  5. 日本語習得支援
  6. 相談等
  7. 日本人との交流促進
  8. 転職支援
  9. 定期的な面談

出所:特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)


言われてみると、外国の方に自力でアパートの契約やライフラインの開通をお願いするのは乱暴ですよね。


ええ。
なので、これらの支援を適切に行えることが、所属機関の要件になっているんですね。
そんなわけで、外国人雇用の経験も基準の一つになっているんです。


え、では、外国人を雇った経験がないと、特定技能の受入れはできないのですか。


いやあ、それだと制度の利用者が限られてしまいますし、そのへんはちゃんと対策がとられているんですね。
「登録支援機関」というところに支援を委託すると、この基準を満たすことになるんです。


そういうことですか。


要するに、受入企業については、特定産業分野の14業種に入っていてコンプライアンスがしっかりしていれば、あとはなんとかなる感じですね。


なるほど。


特定技能雇用契約の基準


続いては、特定技能外国人と特定技能所属機関が結ぶ雇用契約の基準ですね。
これはそのまま「特定技能雇用契約」と呼びます。
ポイントは2つですかね。


ふんふん。


一つ目は、業務内容に関する基準ですね。
単純労働に就いてもらうために呼ぶわけではないので、分野ごとに「業務区分」というものが定められています。
イメージとしては「技能検定3級レベルの労働者に担当してもらう仕事をメインに」という感じでしょうか。


ほうほう。


二つ目は、報酬等に関する基準ですね。
ここは「日本人と同等以上」や「差別的取扱いの禁止」がキーワードです。


報酬等の「等」には、何が含まれるのですか。


よく言われるのは、「教育訓練の実施」や「福利厚生施設の利用」ですかね。あと労働時間もそうなので、所定労働時間も日本人と合わせなければなりません。


なるほど。
外国人だからという理由で、賃金や労働時間に差を付けてはいけないのですね。


まあ、これは特定技能に限った話じゃないんですけどね。


1号特定技能外国人支援計画の基準


最後に、1号特定技能外国人に対する支援計画に関する基準ですね。
これは所属機関のところで紹介した支援項目がきちんと盛り込まれているかどうかがポイントになってきます。
 

(参考)1号特定技能外国人に対する支援項目
  1. 事前ガイダンス
  2. 空港等への送迎および見送り
  3. 住居の確保および生活に必要な契約
  4. 生活オリエンテーション+役所等への同行
  5. 日本語習得支援
  6. 相談等
  7. 日本人との交流促進
  8. 転職支援
  9. 定期的な面談

出所:特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)


なかなか幅広いですよね。


ですね。
「職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援」なんて言い方をします。
外国人雇用に慣れていない事業者だったら、登録支援機関に全部委託するのが無難なのではないでしょうか。


そうかもしれませんね。


まとめ




こんな感じですかね。
特定技能で外国人を雇用するためには、1.特定産業分野14業種に該当する、2.技能と日本語能力が一定以上の外国人を雇う、3.差別的な雇用契約を結ばない、4.日本での生活をしっかり支援する、の4点が重要だと考えてください。


了解しました。


<次回に続く>

Posted in 外国人雇用

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