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建設業許可を受けるための要件とは
鉄筋屋やってて、元請から「そろそろ許可取ってくれ」って言われてるんですけど、どうすればいいんですかね?
なるほど。よく聞く話ですね。
許可を受けるためにはいくつか条件があるんで、一つずつ確認させてもらえますかね?
ええ、お願いします。
まず、独立したのはいつごろです?
会社を作ったのは去年だけど、請負になったのはちょうど3年前すね。
3年ですか……。親方になる前は、会社の役員とかやってないですか?
いや、普通の職人でしたよ。
そうすると、すぐに許可を受けるのは難しいかもしれませんね。
やっぱり……。
じゃあ、どれくらいかかるんですか?
経営業務の管理責任者
*2020年10月1日の建設業法改正により、「経営業務の管理責任者」の名称はなくなりました。
(要件に多少の変更がありますが、制度は存続していると考えてください)
最短で、あと2年ですかね。
ここで引っ掛かる人が多いんですけど、建設業の経営を5年以上経験している人がいないといけないんですよ。ちなみに、会社に社長以外の役員さんています?
いやあ、自分一人だけの会社なんで。
そうですか。どうしても許可が必要な場合は、経営の経験がある人を探して役員になってもらうパターンもあるんですけど……。
元請さんは「一刻も早く許可を受けないと仕事を回せない」みたいな感じなんですかね?
いや、そこまでじゃないと思いますよ。
じゃあ、無理して役員を追加する方向は、考えなくてもいいですかね。
ちなみに、社長の経験だけで許可を受けようとすると、さっき言ったとおり最短でもあと2年なんですけど、それでも大丈夫そうですか?
まあ、そこそこ信頼してもらってると思うんで、あと2年くらいは待ってくれるんじゃないですかね。
しかし、5年もかかるんですね、なんとなく3年くらいかと思ってたんだけど……
ちなみに、他にもなんか条件あるんですか?
専任技術者
ありますあります。
もう一つ、よくネックになるのが技術者ですね。
要件に合う国家資格とかを持っていないと、実務経験が最長で10年必要になるんですよ。
うちの社員が1級の技能士持ってるけど、役員じゃないとダメすかね?
いや、技術者は役員じゃなくてもいいんですけど、その若い人って、会社が雇って給料払ってる感じですかね? それとも、現場に出た分だけ請求してもらって、それを外注費で払ってます?
それでいうと外注なんですけど、社員になってもらう話もしてるんですよ。
そうすると、技術者の件はクリアできそうですね。
財産的基礎・誠実性等
他に「500万円を用意できるかどうか」っていうのがあるんですけど、これは銀行の残高が500万円を超えていればクリアできますね。工事代金とかが振り込まれるタイミングにうまく合わせれば、なんとかできそうですかね?
それは大丈夫そうすね。
そういえば、会社を作るときに資本金100万円のままだと許可取れないかもって言われたんですけど……
あ、資本金は100万円でも問題ないです。
資本金とこれまでの利益とかも合わせて500万円以上あると「残高500万円」の証明が不要になるんで、その話じゃないですかね。
じゃあ、心配しなくてよさそうですね。
あとは、暴力団はダメとか、懲役が終わって5年以内はダメみたいな要件があるんですけど、このへんは……
ああ、それは大丈夫ですよ。
ですよね。
そんなわけで、まとめるとこんな感じになります。
やはり経営経験と技術者の要件をそろえられるかどうかがポイントですかね。
ちなみに、会社って自宅と一緒ですか?
会社作るときに、置き場の横にプレハブ建てたんですけど、それじゃダメですかね?
会社の登記って、そこになってます?
そうすね。
だったら大丈夫だと思いますよ。
打ち合わせするテーブルとかあります?
机はあるけど、テーブルはないすね。
置く場所はあるんで、必要なら用意しますけど。
まあ、そのへんは申請するときに用意しても間に合うので、とりあえずあと2年間、経営の経験を積むのが最優先ですかね。
社会保険の加入
あ、社会保険も入らないとマズいですかね?
今まで俺一人だったから入ってないんだけど。
今のところ、社会保険に入ってなくても不許可にはならないんですよ。
でも、そのうち社会保険の加入も条件になるみたいなので、さっきの若い人が入るタイミングで社会保険のことも考えたほうがよさそうですね。
ちなみに、建設業の許可とは関係なく、ホントは社長一人でも入らなきゃいけないんですけど、そのへんはまあ、追々で……。
ですね。
そのへんの話は、また近いうちに相談させてください。
で、そもそもなんですけど、許可がないと、でかい工事が取れないっていうのは聞いてるんですけど、他にも何かマズいことあるんですかね?
無許可営業のデメリット(許可を受けるメリット)
請負代金の上限
やっぱり、許可がないと税込みで500万円未満の工事しか請けられないのが、一番痛いですかね。
材料代とかも込みで500万円なんで、鉄筋屋さんだとわりとすぐに超えちゃいません?
ですね。ちょっとしたビルなんかだと、材料代だけで1,000万円超えますよ。
あれって、フロアごとに計算したりできないんですよね?
そうなんですよ。一つのビルだったら、請求書が1階分と2階分に分かれていたとしても、合計の金額で取られちゃうでしょうね。
やっぱり……。
そこそこでかい工事の話もあるんですけど、そういうときは許可持ってる知り合いに間に入ってもらったりするんですよ。
そうすると、その業者さんの下請になっちゃいますもんね。
そこで許可があれば一段上の下請になれるんで、入ってくるお金も違ってくるじゃないですか。
そうなんですよね。
だから元請も「早く取れ」って言ってくれてるんでしょうけど……。
競争入札参加の制限
あとは、公共工事を請けるときも、基本的には許可がないと難しいですかね。
え? 前に学校とかやったことありますよ。
ええ。下請だったら、許可がなくても現場には入れるんですよ。でも、一番上の元請になって八王子市とかから入札案件を取るためには、許可がないと無理なんですよね。
ああ、そういうことか……。まあ、公共工事はまだ考えてないですけど、いずれはやってみたいですね。
信用力のなさ
それと、これは感覚的なものもあるんですけど、許可があるとないとで信用もやっぱり違いますかね。
民間のお客さんだとあんまり気にしない人も多いでしょうけど、元請さんは見てますよね。たとえ500万円未満の工事でも、どちらかといえば、許可を受けている業者さんに出したいんじゃないでしょうか。
それはありそうですねえ……。
あと、銀行でお金を借りるときなんかも、許可がないと審査が厳しくなるみたいですね。借りられる金額とか利息とかも変わってくると思いますよ。
そんなこともあるんですね……。
まとめ
なんか、早く許可取らないと、って焦ってきましたよ。
場合によっては役員報酬を積んで経営経験のある人に入ってもらって、なるべく早く許可を受けたほうがいいこともあるんですけど……そこはけっこう重要な判断ですよね。
とりあえず、社長の場合は5年の経営経験が最大のポイントになると思いますけど、さっき説明したとおり他の要件もあるんで、一旦、落ち着いて考えてみてください。
そうですね。
ちょっと一回、同業の仲間にも相談してみますよ。
あと、若い人を雇う件と社会保険のことも考えたほうがよさそうなので、そのへんの話がまとまったらまた相談してください。
わかりました。
またお願いします。
補足
消費税込み500万円の壁
500万円て聞くと、けっこう大きな金額に思えるんですけど、そんな簡単に超えちゃうもんなんですかね?
業種にもよりますかね。
ちなみに、建築一式工事だけは、500万円じゃなくて1,500万円が基準なんですよね。
あと、150平米未満の木造住宅だったら、請負金額の上限はないんですよ。
まあ、家一軒建てるとしたら、なかなか500万円じゃ済まないでしょうからね。
そういえば、労災関係で、建設業には「一括有期事業」というのがありましてね、この開始届や報告書を作るときは、500万円未満の工事はまとめて「その他10件」みたいな記載ができるんですよ。
ただ、こちらには建築一式工事の例外みたいなのはないんですけどね。
なるほど。そういうところでも500万円が目安になってるんですね。
ええ。消費税が8%になったときに移行措置みたいなのがあって、今は税抜の金額なんですけどね。
話を戻しますけど、請負代金の500万円て、さっきの社長さんのところみたいに材料代が高いときついですよ。
元請が材料を支給してくれる場合でも、その材料代を加算して計算することになりますしね。
それ聞いて思い出しましたけど、労災の保険料を計算するときは、「機械装置の組立て又は据付の事業」に限って請負代金から機械装置の金額を控除することができるんですが、建設業許可の場合も同じ考え方なんですかね?
へえ、そんな例外があるんですね。
ちなみに、どんな機械が対象なんですか?
原子力発電所のタービンとか……エレベーターなんかも入ってますね。
たしかに、原発のタービンなんかものすごく高そうですもんね。
業者も限られるんでしょうけど。
建設業だと機械器具設置工事になりそうですけど、こちらは機械の代金も込みで考えるんですよ。なので、機械器具設置工事で500万円未満て、わりと限定されると思いますよ。
まあ、他の工事も似たところはあるのですが、あとはやっぱり、規模にもよりますかね。
木造の一戸建てだったら、屋根とかクロスとかの専門工事で500万円を超えることは、なかなかないんじゃないですかね。
ただ、500万円未満は許可のいらない「軽微な建設工事」って言うんですけど、それしか請け負わない業者さんでも、さっき説明したようなメリットがあるんで、許可を受けるに越したことはないと思いますよ。