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特定建設業と一般建設業、特定建設業の許可基準


八王子でRCの住宅とかメインにやってるんですよ。
最近、立川の設計事務所から仕事を回してもらえるようになったんですけど、そこは結構でかい物件も扱ってるんですよね。


おお、順調そうですね。


それで、金額が一定以上の場合は普通の建設業許可じゃダメだって聞いたことあるんですけど、実際、いくらまで大丈夫なんですかね?


特定建設業の話ですかね……


おお、そうそう。
「特定」って言ってた気がします。


わかりました。
じゃあ、ちょっと説明してみますね。


お願いします。


特定建設業の許可とは

特定建設業の許可が必要になる場合


まずですね、自分が一番上の元請業者か……つまり、施主さんから直接請けた業者かどうかっていうのがポイントになります


へえ。


下請で入る場合は、金額に関係なく特定の許可は必要ないんですね。
普通の許可……一般建設業っていうんですけど、それで大丈夫です。


なるほど。
それだと、うちは元請になることもありますね。


そうすると、下請に出す金額によって、特定建設業の許可が必要かどうか分かれてきます
自分が請け負う金額じゃないんですね。


じゃあ、請負の金額は関係ないんですか?


ええ。
たまに勘違いされるんですけど、一般建設業でも請け負える金額には上限がないんですね。


へえ。


ただ、下請に出す金額が合計で4,000万円以上になる工事を請け負うんだったら、特定建設業の許可が必要になるんです


なるほど。


いくつかパターンがあるので、図を描いてみますね。

 



まずですね、特定が必要になるのは一番上の元請だけなので、XYZ以外は一般で大丈夫なんですね。


ふんふん。


例えばa社は二次下請のd社に5,000万円の工事を出してますけど、自分が一次下請なんで特定の許可はいらないんですよ


なるほど。


で、下請に出す金額が4,000万円以上かどうかを見ると……ここで当てはまるのはX社だけなんですね。


たしかに。


下請全部の合計で計算するんですけど、Y社は合計でも3,000万円なのでセーフです。
もちろん、自分たちで全部施工して下請には出さない、Z社みたいなパターンも一般で大丈夫ですね。


へえ。


ちなみに、建築一式工事の場合は4,000万円の部分が6,000万円になるので、設計士さんの紹介で施主さんから家一棟を受注した場合なんかは、6,000万円未満なら下請に出せるんです。


へえ。
木造の戸建てだったら、たいていは大丈夫そうですね。


ですね。

特定建設業許可業者の制限


ちなみになんですけど、特定っていうのになると、逆に小さい工事は請けられなくなったりするんですかね?
リフォームとかだと、何十万円とかのもあるんで……。


いやいや、別にそういう制限はないですよ。
一般建設業の許可を受けたとき、500万円以上の工事を請けられるようになりましたよね。
でも、今でも500万円未満の工事を請けられるじゃないですか。


たしかに。


それと同じことなんですね。
一般建設業の許可を受けると請負金額の上限がなくなって、特定建設業の許可を受けると下請に出せる金額の上限がなくなるイメージです


なるほど。
そしたら、どうやったら特定になれるか教えてもらえます?


もちろんです。

特定建設業の許可を受けるには

特定建設業許可における財産的要件


まずですね、一般よりも厳しくなるのが財産の要件ですね。
資本金2,000万円以上」と「自己資本4,000万円以上」というのが最低限です。


え?
資本金300万円で会社作っちゃったんですけど、うちの会社はもう取れないってこと?


いやいや、増資といって資本金を増やすことはできますんで、それは問題ないですよ。


ああ、そうか。
ちなみに、資本金と自己資本て違うんですか?


そうなんですよ。
このへん、苦手な社長さんも多いんで、ちょっと説明させてもらいますね。


お願いします。
 

資本金と自己資本の額


まずですね、資本金というのは、株主とかが「会社にいくら出したか」という金額です。
株主って、社長以外にもいらっしゃいますかね?


いや、オレだけですよ。


そうすると、会社設立のときに、社長の名前で銀行に300万円入れませんでしたか?


ああ、そんなことありましたね。


そのお金が「資本金」ですね。
社長の300万円が会社のお金、つまり資本金となって、登記簿などにもその金額が載るわけです


ああ、たしかに資本金300万円て書いてありますね。


その300万円は、会社が、会社のためにつかえるお金なんですね。
「会社を作ったとき、会社の財布に入れたのが300万円」みたいなイメージです。


ふんふん。


そして、その後に決算があって、黒字だったら利益が会社に残るじゃないですか。
利益剰余金というんですけど、資本金とそういうお金を合計したのが「自己資本」なんですね
決算書の貸借対照表だと「純資産」と呼びます。右下の部分ですね。


ああ、純資産て聞いたことある気します。


まあ、自己資本と純資産は同じものだと思って問題ありません。


へえ。


そして、資本金300万円の会社でも、黒字が続いていれば純資産は4,000万円以上ということはあり得るんですね。
逆に、資本金2,000万円で始めたのに、赤字が続いて繰越の利益剰余金がマイナスになって、純資産が500万円とかに減ってしまうこともあり得ます。

 



なるほど……。


ですので、今までの利益と合わせて純資産が4,000万円以上あれば、1,700万円を資本金に組み入れて2,000万円にして、両方の要件をクリアできる可能性があるんですね。


うーん、まだちょっと足りないかな……。


あとは1,700万円増資して2,000万円にする方法もあります。ただし、社長がそれだけのお金を会社に出すか、他の人に出資してもらって株主になってもらうということになりますので、失礼ですけれど、それはちょっと難しいのではないでしょうか。


まあ、そりゃ無理ですね。


1,500万円は利益の組み入れで残り200万円は社長のポケットマネーから、といった組み合わせもできるのですけれど、やっぱり積み重ねた利益で資本金を増やすパターンが多いようですね。
このあたり、やり方によって税金も変わってきますので、実際に資本金の額を増やすときは、税理士さんに相談してみたほうがいいですよ


了解です。


そうすると、資本金とかの要件はまだちょっと先になりそうですけど、せっかくなんで他の要件も説明しておきますね。


ええ。
 

欠損比率と流動比率



財産的要件については、他に「欠損比率が20%以下」ていうのと、「流動比率が75%以上」ていうのがあります。


うーん、聞いたことあるような、ないような……。


このへんになると、行政書士でもよくわかっていない人が多いんじゃないですかね。
私も完璧に理解しているわけじゃないですけど。


へえ。


まあ、私もぜんぜん完璧じゃないですけど……
それはともかく、「欠損比率」というのは、「純資産の中に赤字がどれくらい入っているか」みたいな割合ですね
ですので、黒字が続いて利益が残っている会社でしたら、問題にはならないんですよ


ほうほう。


でも、赤字で純資産が減ってしまっていると、この数字が問題になってくるんですね。
例えば資本金が6,000万円の会社だったら、20%の1,200万円までは赤字が許されるんですよ。


ふんふん。


これが、同じく資本金6,000万円でも赤字が1,500万円だった場合、自己資本は4,000万円以上だけれど欠損比率が25%になってしまうので、特定建設業の要件としてはアウトなんですね

 



なるほど。


次に、「流動比率」というのは、文字通りといえば文字通りなんですけれど、流動資産と流動負債の比率のことなんです
貸借対照表の上のほうにある数字を、左と右で見比べるんですね。まあ、税理士さんによっては、左右に分かれていない書き方する人もいますけど。

 



へえ。


ただし、流動比率が100%を切るということは、「短期で見て、入ってくるお金よりも出ていくお金のほうが多い」ということになりますので、会社の経営としては、ちょっと危ない状態だと思われます
現金商売でしたらともかく、建設業は入ってくるお金のほうが遅いことも多いでしょうから。


ホントにそうですよ。


そのような状況ですので、75%未満というのは、なかなかお目に掛からないですね。


そんなもんなんですね。
今まであんまり気にしたことなかったですけど。


まあ、帰ったら決算書を確認してみてください。


わかりました。


ちなみに、いま説明した4つの数字は、許可を受けるときだけじゃなくて更新するときも要件になるんで、更新直前の決算はとくに注意しないといけないんですね


ああ、そういうことか……。
なかなか大変そうですね。


まあ、大きい工事を請け負っても下請さんにしっかりお金を払えるかどうか、っていうのが大きなポイントですからね。


なるほど。

特定建設業許可における技術者の要件


あと、苦労される方が多いのは、技術者の要件ですかね。
基本的には、建築士とか施工管理技士の1級じゃないとダメなんですよ
あと、技術士でもOKなんですけど、中小企業にはなかなかいないみたいですね。


うーん。オレどっちも2級は持ってるんですよ。
組み合わせでOKとか、そういうのないんですか?


いやー、そういうのはないんですよね。
一般の許可を実務経験で申請するみたいに、「指導監督的実務経験2年以上」というので特定建設業の技術者になれる可能性もあるんですけど、「大きな会社で現場監督していた」とか、そういう人でないと難しいんですよね。


ああ、そういうのはないな……。


あと、建築一式の場合は「指定建設業」というやつになるんで、やっぱり1級じゃないとダメなんですね。
内装仕上とか大工だったら、さっきの指導監督的実務経験ていうのも認められるんですけど。


そっか……。


なので、一級建築施工管理技士を目指す人が多いですよ。
それさえ取っちゃえば、17業種で技術者になれますからね。
建設業許可的には最強ですよ。


うーん、また勉強しなきゃいけないのか……。

特定建設業許可における経営業務管理責任者の要件


そういえば、建設業の許可を取るときに「独立してから5年」ていう条件で苦労した思い出があるんですけど、特定の場合もそういうのあるんですか?


あ、それは大丈夫ですよ。
経営業務の管理責任者、いわゆる「経管」てやつですけど、これは一般建設業でも特定建設業でも条件が一緒なんですよ。


へえ、そうなんですね。


言われてみると、特定の許可を受けると大きな金額の工事を扱えるようになるんで、それなりの経営経験が必要になりそうなもんですけどね。
まあ、でも、そこは気にしなくて大丈夫です。


了解しました。


とにかく建設業の経営経験が6年以上あれば、一般でも特定でも全部の業種で経管になれるので安心してください

まとめ


特定建設業の許可についてまとめると、こんな感じですかね。

 



やっぱり自己資本てやつと技術者が問題ですかね。


ええ、そこのハードルが高いですね。
技術者を雇える見込みがなさそうだったら、社長に試験を受けてもらうのが近道だと思います。


ですかね。


ただ、技術者が一人しかいないと、現場に配置する人がいなくて結局は仕事を受けられなくなることもありますので、従業員の人たちにも積極的に資格を取ってもらったほうがいいですよ。


そうなんですね。
せっかくなんで、みんなで勉強してみるかな……。


あと、資本金や自己資本については、毎年の利益で増やしていくのが王道なので、そのへんは税理士さんともよく話し合ってみてください。
「特定建設業の許可を目指しているので節税よりそっちを優先してほしい」って伝えれば、わかってくれると思いますんで。


了解しました。

補足

財産的要件の厳格性


資本金2,000万円て、小規模な事業者さんだと結構厳しいでしょうね。


ええ。
ただ、自己資本4,000万円というのも含めて、「下請業者にちゃんと請負代金を払えるか」っていうのは、やはり大きなポイントでしょうからね。


たしかにそうですね。


下請保護の考え方が前提なので、建設業許可で基準になる「500万円」とは違って、材料代を元請が持つときは、その金額は含めないで「4,000万円以上かどうか」を見るんです。


なるほど。
下請に払う金額が重要なんですね。


そういうことなんだと思います。


そういえば、派遣業も「純資産(資産−負債)2,000万以上で現預金1,500万円以上」という要件がありますけど、あれは「自社の労働者にちゃんと賃金を支払えるか」みたいな話ですもんね。


やはりそこは重要なんですね。

特定建設業と一般建設業の組み合わせ


そういえば、建築一式は技術者の要件が厳しいって話があったじゃないですか。


ええ、指定建設業のことですね
全部で7業種あるんですけど、(指導監督的)実務経験ではダメで、一級の国家資格者か技術士じゃないと専任技術者になれないんですよ


なるほど。
ちなみに、7業種って、他に何があるんですか?


えーとですね……建築一式、つまり建築工事業の他には、土木工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業で7業種ですね。


そうすると、さっきの話みたいに「大工なら特定建設業の技術者になれるけど建築一式だとなれない」みたいな話も出てきますよね?


ええ。
あり得ますね。


そんなときって、場合によっては大工に絞って、それ以外の業種を廃業したりするんですか?


いやいや、大工だけ特定建設業の許可を受けて、あとは一般のままにしておけば済む話ですよ。


ああ、特定と一般が混ざっていてもいいんですね


ええ。たまーに見かけますよ。
財産的要件も経管の要件も全業種で同じなので、おそらく専任技術者の問題でしょうね。
更新とかの手数料が倍になっちゃうんで、なるべく避けたいところなんですけど。


たしかに。


ちなみに、一つの会社で一般建設業と特定建設業の許可が混在していることはあり得ますけど、知事許可と大臣許可が共存することはないですね。
これは必ず、どちらかの許可になります。

 



へえ。


営業所によって許可業種が違うことはあるんですけど、知事と大臣は単純に「建設業の営業所が2つ以上の都道府県にあるかどうか」だけで見るんですね。


ああ、そういう話でしたよね。

「一般」と「特定」


そもそもなんですけど、建設業の場合は「一般」よりも「特定」のほうが上というか、そういう感じなんですね。


まあ、平たく言うと、「上」ですね。


これ、派遣業は逆なんですよ。


ああ、そうでしたっけ。


最近の改正でなくなっちゃいましたけど、「特定労働者派遣事業」というのは、「特定の労働者しか派遣できない」みたいな感じで、一般労働者派遣事業のほうが幅広い労働者に対応できたんですね。


言われてみると、外国人技能実習制度の監理団体も同じような感じですよね。
特定監理事業の許可だと1号と2号の技能実習生しか監理できないけど、一般監理事業の許可になると第3号まで対応できるようになるという。


そうなんですか?
特定監理団体になると、建設現場で外国人を雇用できるんだと思っていましたよ。


それって、外国人建設就労者受入事業の話かもしれませんね。
たしかに、そっちは「特定監理団体」の認定を受けないと外国人を受け入れられないですね。


いずれにせよ、雇用するのは監理団体じゃないですけどね。


ややこしいですね。


まあ、特定技能とかも出てきて、制度がつぎはぎみたいになっちゃってますからね。


そういえば、行政書士と社労士にも「特定」ってあるじゃないですか。
そうでない人は「一般行政書士」や「一般社労士」というんですか?


いやいや、そこは一般付けないですね。


ちなみに、私はときどき「不特定行政書士」と名乗っています。


へえ……。


へえ……。
 

Posted in 許可・経審・入札

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