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建設業で特定技能外国人を雇う際のポイント(建設分野固有の基準)

<前回の続き>
(前回)
[clink url=”https://hassaw.co.jp/2020/01/07/tokuteigino01″]



特定技能制度全体のポイントは前回お話ししたとおりなんですが、「特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準」というのがありまして、建設業の場合はこれが特に細かく決められているんですね。


そのようですね。


なので、今回は建設分野に固有の基準に絞って解説していきます。
ちなみに、この本では建設分野だけ別の章を設けて解説しているんですけど、その部分は私が書いたんですよ。





わあ、ブレースパートナーズの井出さんとの共著ですね。
さっそく注文してみます。
(繰り返される茶番劇)

 

特定技能外国人を受け入れられる業種


まずですね、一口に建設分野といっても、すべての業種で特定技能の受入れができるわけではないんですね。


技能実習もそうでしたよね。


ええ。
技能実習と外国人建設就労者受入事業は業種が同じなんですけど、特定技能だけは少し違うんですね。ご覧のとおり、技能実習等の25職種38作業に対して特定技能は18職種になっています。

(参考)技能実習の移行対象職種・作業と特定技能の受入対象職種(法務省資料を基に作成)
技能実習特定技能
職種作業職種
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築板金ダクト板金建築板金*3
内外装板金
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
建具制作木製建具手加工
建築大工大工工事建築大工*3
型枠施工型枠工事型枠施工
鉄筋施工鉄筋組立て鉄筋施工
とびとびとび*3
石材施工石材加工
石張り
タイル張りタイル張り
かわらぶきかわらぶき屋根ふき
左官左官左官
配管建築配管配管*3
プラント配管
熱絶縁施工保温保冷工事保温保冷*3
内装仕上げ施工プラスチック系床仕上げ工事内装仕上げ/表装
カーペット系床仕上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
コンクリート圧送施工コンクリート圧送工事コンクリート圧送
ウェルポイント施工ウェルポイント工事
表装壁装内装仕上げ/表装
建設機械施工押土・整地建設機械施工
積込み
掘削
締固め
築炉*1築炉
鉄工*2構造物鉄工
塗装*2建築塗装
鋼橋塗装
溶接*2手溶接
半自動溶接
特定技能から新設トンネル推進工
土工
電気通信
鉄筋継手
吹付ウレタン断熱*3
海洋土木工*3

*1 技能実習2号まで
*2 建設業者が実習実施者である場合に限る
*3 2020.02.28追加


だいぶ減ったようですね。


まあ、内装仕上げや建設機械施工みたいにいくつかの作業がまとまった職種もあるのですが、とび(鳶)や建築大工などは特定技能の対象になりませんでしたね。ただ、この対象職種は、年度ごとに見直すようで、とびや大工は2020年度から受入れを検討中という話*もあります。
*「特定技能外国人 7職種の追加を検討」建通新聞電子版(2019.09.27)

まあ、内装仕上げや建設機械施工みたいにいくつかの作業がまとまった職種もあるのですが、対象にならなかった業種も結構ありますね。



ほうほう。


そんなわけで、2019年度末の時点では18の職種(業務区分)ごとに、「業務の定義」や「主な業務内容」というのが定められているんですね。建設分野の運用要領*に別表があって、その6−2から6−19に載っています。
*特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 −建設分野の基準について−(法務省・国土交通省 編)


へえ。


ここに書かれている「主な業務内容」というのが、技能検定3級レベルの職人さんがやるような作業です。いわゆる一つの、「相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務」というやつですね。


ああ、例のやつですね。


ただ、一日を通してずっと専門的な作業だけをやってもらうのは現実的じゃありませんから、「想定される関連業務」という欄に、資機材の運搬ですとか、そういうものも挙げられています。


なるほど。


あと、関連業務に挙げられていなくても、作業の準備や後片付けといった、周りの日本人も行っている作業を手伝ってもらうことができるんですね。もちろん、運搬や片付けばかりやってもらうわけにはいきませんけど。


でしょうね。


建設特定技能受入計画の基準


もう一つ押さえておきたいのは、建設業の場合は「建設特定技能受入計画」というのが必要になる点ですね。これは他の分野でも必要な「1号特定技能外国人支援計画」とは別に作らなければならないんです。で、在留資格の諸申請の前に国土交通大臣の認定を受けておくと。


どんなことを書くのですか。


もちろん記載するべき事項が決まっていて、大きく分けると次の4つになります。


(参考)建設特定技能受入計画に記載が必要な事項
  1. 認定申請者(特定技能所属機関)に関する事項
  2. 国内人材確保の取組に関する事項
  3. 1号特定技能外国人の適正な就労環境の確保に関する事項
  4. 1号特定技能外国人の安全衛生教育および技能の習得に関する事項

出所:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 −建設分野の基準について−(法務省・国土交通省 編)


うーん、なんとなくわかりますけれど……


まあ、これだけじゃイメージ湧きませんよね。
なので、ここから一つずつ細かく見ていきますね。


お願いします。


1.認定申請者に関する事項


まずは、認定申請者、つまり受入企業である特定技能所属機関に関する項目ですね。
建設業で特定技能外国人を受け入れるために、所属機関として押さえておかなければならないポイントがあるんです。


ふんふん。


建設業許可


まずですね、建設業法第3条の許可、つまり建設業許可を受けている必要があります。


ということは、経営経験や技術者の専任などが問題になってくる会社もあるのでは……。


ええ。建設業許可の主な要件は「経管(経営業務の管理責任者)」「専技(専任技術者)」「財産的基礎」の3つですけど、経管には5年以上の経営経験が求められますから。

【参考記事】
建設業許可を受けるために必要な要件と無許可営業のデメリット



でしたよね。


まあ、特定技能外国人を受け入れて継続的に雇用していくのであれば、財政的な基盤はもちろん、経営能力や技術力も一定のレベルが求められるでしょうからね。そう考えると、建設業許可を必須にしたのも、筋が通っているのではないでしょうか。


なるほど。


建設キャリアアップシステム


また、昨年から運用が開始された建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録も必須となっています。技能者の処遇改善を目指して設計されているシステムなので、特定技能の基準に入ってきたのもうなずけますね。


国土交通省の肝いり施策でしたよね。


ですね。
あと、このシステムで技能者に配布されるカードには、在留資格の情報も登録されることになるそうなんですよ。Suicaみたく現場に入場するときタッチ&ゴーするので、不法就労者は現場に入れなくなるでしょうね。


ほうほう。


なので、受入企業が事業者として登録するのはもちろん、雇用する特定技能外国人のことも技能者として登録する必要があります。


でしょうね。


建設技能人材機構(JAC)


さらにですね、新しくできた建設技能人材機構(JAC)という一般社団法人に所属する必要もあるんです。


そんな話でしたね。


まあ、理由はいろいろあるのですが、とにかく賛助会員として直接加入するか、業界団体を通じて間接的に加入するかのいずれかを選択することになります。


そして、会費を払うことになるのですね。


ええ。
間接加入の場合は業界団体によりますけど、直接加入なら年間24万円みたいです。
他にも、特定技能外国人を1名受け入れるごとに、年額15万円から30万円の受入負担金が発生します。


たしか、海外で試験を受けるかどうか、等の事情によって金額が変わるのでしたよね。


ええ、こんな感じですね。

 

特定技能外国人一人当たりの受入負担金
対象の特定技能外国人年額月額
元・技能実習生15万円12,500円
試験合格者(対策支援なし)18万円15,000円
試験合格者(対策支援あり)30万円25,000円

出所:(PDF)会費等の金額((一社)建設技能人材機構)


受入企業の基準としては、こんなところでしょうか。


わかりました。
「建設業許可」「建設キャリアアップシステム」「建設技能人材機構(JAC)」の3点ですね。


まさしく。


2.国内人材確保の取組に関する事項


続いては、国内人材の確保措置ですね。
前回、特定産業分野の説明で「生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野」という言い方をしたじゃないですか。


でしたっけ。


ええ。
運用要領のはじめにも「在留資格『特定技能』創設の目的」として書かれているんですけど、「国内で人材確保に取り組んでも解決しないから外国人を受け入れる」というのが、特定技能制度の考え方なんですね。
要するに、「外国人を呼ぶ前に日本人を雇う努力をしてください」ということです。


具体的には?


建設特定技能受入計画の添付書類として、直近1年以内にハローワークに申請した求人申込書などを付けることになります。


ほうほう。


他には、すでに雇っている日本人職員の待遇なんかも確認されますね。「待遇悪いから人が辞めちゃうし、求人出しても人が来ないんでしょ」と言われないようにしておかなければならないんですね。


なるほど。
国内で求人などの努力を行っても人手不足が解消しないのであれば、特定技能外国人を受け入れてもよい、ということなんですね。


ですね。


3.1号特定技能外国人の適正な就労環境の確保に関する事項


次は、就労環境に関する基準ですね。
ここは報酬に関する部分とその他に分けて説明していきます。


報酬関連



まずは報酬額ですけど、これはやはり「日本人と同等以上」ということになりますね。
技能検定3級合格レベルの技能者なので、それなりの扱いをしなければなりません。


他の分野もそうですよね。


ええ。
ただ、これは建設分野に限った話なんですけど、報酬を月給制で払わないといけないんですね。


ああ、そういえば。


建設業の場合、いわゆる「日給月給」(日給制)が多いと思うんですけど、それだと雨の多い月なんかは給料が減ってしまうんですよね。それが原因で技能実習生の失踪が多いとも言われるので、特定技能は月給制が要件になったようです。


ほうほう。


さらに、1号特定技能外国人の在留期間は最長5年なので、この間の昇給見込額も計画に入れる必要があるんですね。経験年数とか資格の取得予定などを考えながら、計画を作っていくことになるでしょうね。


なかなか大変そうですね。


こういうの苦手な業者さんも多そうですからね。


その他就労環境



就労環境については、報酬以外にもいろいろと適正化が求められています。
雇用契約を結ぶ際に所定の様式で労働条件等を説明することや、受入開始や終了時に国土交通大臣への報告を行うことなども、就労環境の適正化につながる部分でしょうね。


ふんふん。


あと、特定技能外国人の受入人数に上限枠が定められているんですよ。これは建設と介護にだけ求められる要件ですね。


へえ。


建設業の場合、同時期に複数の現場を経験する可能性がありますよね。そういった状況でも適切に支援や指導を行うためには、一定数の常勤職員が必要になるわけです。


どれくらい必要なんですか。


具体的には、1号特定技能外国人と外国人建設就労者の合計数と同じ数だけの常勤職員が必要です。ちなみに、ここでいう常勤職員には、1号特定技能外国人と外国人建設就労者はもちろん、技能実習生も含まれません。なので、永住者や日本人の配偶者等だったら、外国籍の人でも常勤職員数に含めることができるんですね。


ややこしいですね。


まあ、職場に永住者等がいないのであれば、「日本人の職員と同じ数まで」と考えてよいのではないでしょうか。


4.1号特定技能外国人の安全衛生教育および技能の習得に関する事項


最後は教育関連ですね。
安全衛生教育はもちろん、技能の習得に関する教育も計画的に行っていく必要があります。


技能実習と違って、検定の合格が必須ではありませんよね。


ええ。「検定に合格しないと次に進めない」みたいな制限はないですね。
でも、特定技能2号が技能検定1級レベルであることを考えると、5年以内に2級から1級へと進んでいく計画を立てておくのがよいのではないでしょうか。


たしかに。


まとめ



こんな感じですかね。
建設分野固有の基準といっても、雇用契約上の注意点など、基本的な考え方は他の分野と同じような感じです。
特徴的なのは次の5点ではないでしょうか。

  • 建設業許可
  • 建設キャリアアップシステム
  • 建設技能人材機構
  • 月給制
  • 受入人数枠


あと、上記5点の基準も満たした建設特定技能受入計画の認定を受けるのも、建設分野独自の要件になっていますね。




なるほど。よくわかりました。
ありがとうございます。


いえいえ。


いえいえ。

Posted in 外国人雇用

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