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親戚の集まりで社労士の「おじさん」がいろいろ説明していくシリーズです。
アイコンデザイン:こなか かのこ様
【参考】動画はこちら
目次
使用者と労働者
学校を卒業したら、やっぱり就職しないといけないのかな?
就職したくないの?
いや、そういうわけじゃないんだけど、他にどんな道があるのかなと思って……
いきなり経営者になるって道もなくはないよ。
社長になるってこと?
いやいや、会社の社長だけでなくて、例えば床屋さんとかパン屋さんとかも、店主は立派な経営者だよ。
じゃあ、床屋のおじさんとかも社長なの?
うーん、そうとは限らないかな。
会社にしていたら社長だけど、個人事業主ってのがあるからね。
兄貴も今は社長だけど、独立したときは個人事業主だったでしょ?
そうだね。
30歳で独立して、会社にしたのは40歳のときだよ。
ん? 何が違うの?
これもちゃんと話すと長くなるんでざっくり説明するけど、商売するときに「会社じゃなきゃいけない」ってことはないんだよね。
介護サービスみたいな例外はあるんだけど、基本的には会社を作らなくても、品物を仕入れて人に売ったりできるのよ。これが床屋さんだったら、お店開いてお客さんの髪切ってお金もらう商売になると。
で、そうやって会社にしないで商売している人のことを、「個人事業主」っていうのね。
自営業とは違うんですか?
あ、同じものと考えて問題ないと思うよ。個人事業主が正式名称みたいな感じかな。
ちなみに、さっきから「会社」って言っているけど、個人事業主と対(つい)で考えるんだったら「法人」のほうがいいかな。株式会社や有限会社だけでなくて、一般社団法人とか学校法人とかもあるからね。まあ、学校法人とかは「商売」って言っちゃいけないのかもしれないけど……。
ともかく、個人事業主も社長と同じ経営者ってことね。
まあ、いずれにせよ、いきなり独立するのはかなり難しいと思うよ。
そういえば、大学の同級生で卒業する前に会社作ったやつがいたけど、雑誌の取材とか受けていたし、かなりレアケースなんだろうね。
まあ、まだまだ少数派だろうね。
なので、やっぱりどこかの組織に就職するのが一般的なんじゃないかな。
就職しないでフリーターになる人も結構いるでしょ?
フリーターというか、パートや派遣でも、雇われる側なら同じことかな。
要するに、「雇う側になるか、雇われる側になるか」ってことなのよ。なので、さっき説明した個人事業主も「雇う側」だね。
法律に出てくるような言葉だと、雇う側、つまり経営者は「使用者」って言われるのね。で、正社員だけでなく、派遣社員やパートタイマーも含めて雇われる側は「労働者」になると。もちろん、雇う側が法人か個人事業主かは関係ないの。
ちなみに、国家公務員の一部とかは労働者じゃないって考え方もあるけど、「経営者か労働者か」って考えたらほぼ労働者だよね。
オレは使用者ね。
僕は労働者か。
あと、社長だけでなくて、会社の役員とかも基本的には使用者になるかな。
ドラマに出てくる「専務」とか、ああいう人たちね。
うちの会社は部長も役員だったと思うけど。
まあ、役職名とは必ずしも一致していないし、もっと言うと役員だったら必ず使用者ってわけでもないんだけど、「社長も含めた役員は使用者で、それ以外の従業員は労働者」ってイメージでいいんじゃないかな。
なるほど。
そう考えると、やっぱり僕は卒業したら労働者になりそうだね。
まあ、卒業までに考えが変わるかもしれないけど、「労働者に関係するルール」みたいなのは、知っておいて損はないと思うよ。
僕もよくわかっていないので、ちょっと興味ありますね。
オレも使用者として、ぜひ聞いておきたいな。
そしたら、まずは労働関係の法令がなんのためにあるのか、ちょっと説明してみますかね。
労働関係法令の意味
請負契約と雇用契約
まず、「仕事をしてお金をもらう」って流れを考えたときに、経営者と労働者では、結ぶ契約が違ってくるのね。
そりゃあ、お金を払う側ともらう側なんで、違う契約になるのは当たり前なんじゃ?
あ、いや、そういうことじゃなくて、ここで言っているのは「経営者もお金をもらう側」になる場合のことなのよ。
経営者より「事業者」と言ったほうがわかりやすいかな。つまり、事業者同士で仕事のやり取りをするケースがあると。
ああ、外注のことが言いたいのか。
そうそう。
例えば、会社で「経理」って仕事があるんだけど……イメージ湧く?
会社のお金を管理している人たち、みたいな?
まあ、ここはそんな感じで問題ないかな。
経理の中には、払ったお金や入ってきたお金を正確に記録していくような仕事があるんだけど、これは必ずしも自社の従業員がやらなくてもいいのね。
レシートとか伝票とかを預かってパソコンに入力してくれる会社があるので、そういうところにお願いすることもできると。もちろん、お金はかかるけど。
うちは税理士さんに頼んでいるよ。
まあ、それも同じ理屈だよね。
「会社から会社」はもちろん、「会社から個人事業主」も同じで、要するに事業者同士で「仕事を頼んで報酬を支払う」って関係だと、請負契約を結ぶことになるのね。業務委託契約って呼び方になることも多いけど。
うちら建設業は、まさに請負契約だな。
メンテナンス業務とかだと、業務委託ってのもある気がするけど。
だよね。
これに対して、経理業務を外注には回さないで、社内の人に担当してもらうこともあるよね。この場合、やっている業務は同じなんだけど、会社と従業員、つまり使用者と労働者が結んでいるのは、請負契約じゃなくて雇用契約なのよ。
逆に言うと、雇用契約を結んで「働いて賃金をもらっている人」が労働者になるのね。
じゃあ、契約書がなかったら?
雇用契約自体は、使用者と労働者で「お金払うから働いて←→働くからお金ちょうだい」の合意だけで成立するので、実際に働いているんだったら、契約書がなくても契約はしていることになるはずなんだよね。まあ、本当は文書とかメールのやり取りがないとマズいんだけど。
いずれにせよ、外注先とは請負契約で、従業員とは雇用契約になると。
中身もだいぶ違うよね?
労働者を守る必要性
もちろん、もちろん。
請負契約の場合は、「どんな仕事をいつまでにいくらで」みたいな感じになるかな。
これは事業者同士の契約なので、中身はわりと自由に決められるのよ。契約自由の法則っていうのもあるし。
うーん、けっこう細かい縛りがあるイメージだけど。
まあ、建設の場合は建設業法で細かく決められているからね。他の業種でも下請法とかあるので、一定のルールは守らなくちゃいけないんだけど。
契約ごとって、基本的には当事者同士で自由に決められるんだけど、それだと立場の弱い人が不利になっちゃうこともあるんで、場面に応じて最低限のルールを作っているイメージかな。
なるほど。
で、これが雇用契約になると、ホントに細かい決まりを守らなくちゃいけなくなるのね。
使用者と労働者は「対等の立場」って前提なんだけど、普通に考えたら雇う側の使用者が圧倒的に強いでしょ。なので、労働者を守るためのルールが細かく決められているのよ。
使用者ってそんなに強いかな……。
強いでしょ。
まあ、中小企業と大企業でイメージが違うかもしれないけど。
でも、例えば仕事が見つからなくて困ってる人が採用面接を受けたときとか、多少は不利な条件を出されても「まあ、仕方ないか」ってなりそうでしょ?
たしかに。
なので、労働者が不利な条件で働かされることがないように、労働基準法とか労働契約法とかのいわゆる「労働法」で、主に使用者が守らなくちゃならないルールがいろいろと決められているのよ。
例えば、「一日に何時間以上働かせてはいけない」とか「時給はいくら以上払わなければならない」とか、そういう最低限の基準を作って、労働者を守っているのね。
ふんふん。
そうやって労働者を使用者と同じ位置まで押し上げているのが、労働法ってことになるかな。
一口で言うと「労働者を守る法律」ってことね。
この解説を動画でもっとわかりやすく!
https://youtu.be/H8vDdMCQk5o