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親戚の集まりで社労士の「おじさん」がいろいろ説明していくシリーズです。
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目次
はじめに
労働時間の次に説明しておきたいのは、休日の話ですね。
休みなしで働かされたら、やっぱり体を壊しちゃうでしょうからね。
そうそう。
なので、休日に関しても、きちんとルールが決められているんだね。
法定休日
法定休日とは
まず、「使用者が労働者に最低どれだけの休日を与えなくてはならないか」というのが、労働時間と同じく「法定休日」として決まっているんだけど、どれくらいだと思う?
やっぱり、土日祝日がベースになるんですかね。
盆と正月はどうなんだろ。
でも、お店なんかは、土日もやっているところ多いよね。
そのへんは、曜日を変更したりできるんじゃないかな。
うーん。
そもそも、曜日とかイベントとか関係なく、日数で決まっているんだよね。
「月に何日」ってこと?
従業員を募集するときなんかは、求人案内に「年間休日:何日」みたいな書き方するぞ。
うんうん。
労働時間は、1日と1週間の基準がありましたよね。
休日も、「週に何日、かつ月に何日、かつ年に何日」みたいな感じになるんじゃないですか。
ほうほう。
週に2日で、月に……あ、30日の月と31日の月はどうなるんだろ。
そもそも、建設業界は週休2日じゃない会社が多いよ。
それって、最低限を下回っているんじゃない?
そうなのかな……
いやいや、そうとも限らないよ。
だよな。
そんなわけで、正解は「週に1日」でした。
労働基準法 第35条(休日)
1 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
月単位や年単位の基準はないんですか?
そうなのよ。
もう一つ、「4週で4休」という基準があって、休日ゼロの週を作れないこともないんだけど、いずれにせよ「週休1日」がベースにはなるね。
でも、週休2日の会社も多いですよね。
うん。
これはね、労働時間が関係してくるんだね。
どういうこと?
労働時間の基準は「1日8時間と1週40時間」だったよね。
なので、1日に8時間の設定にすると、週6勤務だと48時間になっちゃうのよ。要するに、月曜日から金曜日の5日間で40時間の上限に達してしまうと。
なるほど。
だから、週休2日の会社が多くなるんだね。
で、法定休日を日曜日に設定したとすると、土曜日は「所定休日」というやつになるんだ。
ちなみに、週6日の勤務にしたかったら、1日の労働時間は6時間40分が限界だね。これに6を掛けると、ちょうど40時間になるよ。
……たしかに。
もっと短くして、例えば1日5時間にすると、週7日フル出勤でも合計35時間なので、40時間には収まるのよ。
バイトのシフトだったら、そういうのもあるかも。
でも、これだと週に1日の休日が取れていないから、やっぱりダメなんだよね。
そっか……。
こんな感じで労働時間と休日の基準があるので、労働者が極端な長時間労働や連続勤務をさせられないようになっているんだね。
でも、実際は残業も休日出勤もありますよね?
うん。
この前、36(サブロク)協定を結べば時間外労働と休日労働ができるようになる、って話をしたよね。
でも、時間数の上限があるので、やっぱり極端な働き方はできないようになっているんだよ。
そもそも、残業や休日出勤には割増賃金を払わなくちゃならないので、経営者としてはなるべく抑えたいところなんだよな。
だよね。
割増賃金の話はまた次の機会にするけど、法定休日のポイントは、やっぱり「労働者が長期間の連続勤務をさせられないため」だと思うんだ。
ですね。
で、祝日とか盆と正月とかは、べつに休日にしなくても基準は満たせるんだけど、あんまり休みが少ないと、労働者から不満が出てきちゃうからね。
まあ、祝日は微妙だけど、盆と正月も休みなしじゃあ、みんなやる気なくなっちゃうよな。
そのへんは、業界の特徴もあるかもね。
「祝日も休むのが当たり前」って考えている人も多いと思うよ。
そう思ってました……。
逆に、「年末年始なんて休めなくて当たり前」って人もいるだろうし。
僕も塾講師やっていたころとか、そんな感じだったよ。受験の直前期だからね……。
そういえば、塾講師してたな。
休日と賃金の関係
あと、労働者によっては、「休日が多いと困る」って場合もあるんだよね。
どういうことです?
月給制で働いていると、休みが多くても少なくても給料変わらないんで、「だったら休みが多いほうがありがたい」ってなるよね。
まあ、正直。
でも、時給や日当(日給)で働いていると、労働日が少ないと収入も減っちゃうので、それはそれで厳しいんだよね。
うんうん。
例えば、月給23万円の人と日当1万円の人がいたとするよね。
ええ。
これで10月の勤務日数が23日だったとすると、月給の人も日当の人も給料は23万円になるよね。
ですね。
でも、「5月は連休もあって勤務日数が18日だけでした」ってなると……
日当だと月収18万円になっちゃいますね。
そう。
それに対して月給の人は18日勤務でも23万円もらえるので、仮に日当を計算したら10月は1万円だったのに5月は約12,777円になるのよ。
結構、違いますね。
まあ、月給制の場合、実際は年間の労働日数を考えて賃金の設定をしていると思うんだけど、労働者によって休日の捉え方が違うってことはあるよね。
言われてみると、「今月はあんまりシフト入れなかったな」と思うことあるな。
でしょ。
生活費かかってないだろ……。
いろいろ入り用なんだって。
まあ、そうかもな。
年次有給休暇
年次有給休暇とは
あと、休日とセットで語られることが多いのは、年次有給休暇だね。
単に「有給休暇」とか、もっと略して「有休(有給)」とか「年休」って呼ばれることもあるけど、要するに「休んでも給料減らない」ってやつね。
うらやましいよね。
いやいや、学生のバイトでもちゃんと有休あるのよ。
え、そうなの?
そうなのよ。
「労働者」に与えられた権利なので、いわゆる「正社員」とか「パート」とか関係ないんだよね。
そうなんだ……。
こんどバイト先の人に聞いてみようかな。
正直、雇い主としては触れてほしくない部分かもしれないけど、今は有休を取らせないと会社に罰則もあるからな。
だね。
働き方改革で厳しくなった部分だけど、そこも後で説明するね。
ああ。
じゃあ、まずは有休の基本的な仕組みから説明してみるね。
お願いします。
そもそも、有給休暇が「いつ、何日出るか」って話なんだけど、もちろん、これも法律で決まっているのね。
労働基準法 第39条(年次有給休暇)
1 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
条文を見ると難しいんだけど、「働き始めてから6か月が経ったら、10日の有給休暇が出ますよ」ってことだね。
ただし、「出勤率8割以上」という要件もあるので、「そもそも休みが多い人には有給休暇を追加で支給することはない」って仕組みになっているのよ。
有給休暇を取ったことによって出勤率が下がった場合なんかは、どうなるんですか?
有給休暇だけで2割超の休みにはならないはずだけど、そもそも年次有給休暇を取った日や仕事でケガして休んだ日なんかは、「出勤したものとみなす」って決まりなのね。要するに、計算上は出勤した日として扱うと。
へえ。
このへんはもっと細かい決まりがあるんだけど、例によって今回は端折っていきますね。
わかりました。
で、この入社半年後、例えば4月1日入社だったら10月1日が基準日になって、そこから毎年10月1日に有給休暇が発生するのね。だから「『年次』有給休暇」になると。
へえ。
しかも、有休は年を追うごとに増えていって、最大で年20日までもらえるようになるのよ。
そして、次の年までは持ち越せるので、最大で40日持っている人もいるのね。
そういう先輩、いますね……。
それも問題なんだけどね。
ちなみに、2年を過ぎると消えてしまうので、労働者からしたら「使わないと損」てことになるよね。
ですね。
で、アルバイトというか、週の労働日が4日以下で労働時間も30時間未満の、いわゆるパートさんの場合なんだけど、「6か月で8割以上勤務」とかの条件は同じなのね。
じゃあ、半年以上働いていたら10日も休めるの?
いやいや、さすがにそんなに甘くはなくて、週に何日働くかで有休の日数も変わっていくのよ。
ちなみに、週によって働く日数がまちまちな人なんかは、年間の労働日数で計算する方法もあるね。
そりゃ、そうか。
ん?
月給の場合は「休んでも給料が減らない」ってことだよね。
日当(日給)の場合も「休んでも日当がもらえる」ってことだろ。
これ、時給の場合はどうなるんだ?
時給も「休んでももらえる」のは同じなんだけど、そもそも「何時間分の時給が出るのか」って疑問はあるよね。
たしかに。
これはね、そもそもシフトが入っている日に有休を取得したんだったら、働くはずだった時間分だけもらえるのよ。
言われてみれば。
じゃあ、「シフト入っていたけど風邪引いちゃった」みたいな場合じゃないと使えないの?
いやいや、そうとは限らないんだけど、計算はちょっと面倒になるかな。
ほうほう。
例えば、毎回の勤務時間が決まっているパートさんだったら、その時間数で計算するのもアリだと思うんだよね。
でも、日によって働く時間も違う人の場合だと、そうもいかないでしょ。
労働者の保護を考えたら、最大の時間数で計算するべきなんじゃないんですか?
そういう考え方もあるかもしれないけど、そこまでは求められていないんだよね。
そもそも有給休暇の目的は、労働者に「給料の心配なく」休んでもらうことなので、多めに払う必要はないんじゃないかと。
ふんふん。
そんなわけで、直近3か月の実績から計算した「平均賃金」で払うのが基本になるんだね。
じゃあ、シフトの平均が5時間だったら、5時間分の給料がもらえるってこと?
いやあ、じつはもっと厳しいのよ。
平均賃金
まず、平均賃金は出勤日数でなく「歴日数」というやつで計算するのね。つまり、5月の出勤日数が18日だったとしても、カレンダー通り31日になると。
だいぶ違うね。
だね。
ちょっと例を挙げて説明してみるね。
うん。
実際は給料の締め日を基準に計算するんだけど、わかりやすくするために末締めってことにすると、1月1日から3月31日までの3か月は、31日、28日、31日の合計で90日になるよね?
うん。
で、時給1,000円として、1月は40時間働いて4万円、2月は60時間働いて6万円、3月は50時間働いて5万円だったと。
うーん……うんうん。
そうすると、3か月の合計賃金が15万円になるので、暦日数の90で割った1,666円(67銭)が平均賃金になるのよ。
え、それだけ?
時給じゃなくて、一日分だよね?
元の時給が1,000円なので、時給がそれより高くなることはないよね。
そりゃそうか。
でも、これじゃあ1.7時間分くらいにしかならないでしょ。
なので、暦日数でなくて労働日数で計算する方法もあるのね。
ただし、この場合はさらに60%を掛けないといけないのよ。
そうすると……
さっきの話、1月は9日勤務、2月は11日勤務、3月は10日勤務だったとすると、3か月間の合計勤務日数が30日になるよね。
うん。
で、15万円を30日で割って0.6を掛けると、3,000円になると。
そうすると、こっちのほうが高くなるので、この場合の平均賃金は3,000円になるんだ。
どちらにせよ、かなり低いイメージですね。
まあ、1日に5,000円で月10日くらいしか働かない人を例に出したからね。
これが例えば、フルタイムで月給23万円の人だったら、平均賃金は7,666円(67銭)になりますから。
それでも、やっぱり少ない気がしますね。
これは、支払うときも労働日数じゃなくて歴日数で計算する場合があるので、仕方ないといえば、仕方ないんだよね。
まあ、有給休暇に使われる場合は、労働者が不利になっちゃうけど。
そうなんだね。
ということで、平均賃金の説明が長くなっちゃったけど、まとめるとこんな感じだね。
有休取得の促進
でも、有給休暇を取るときって、やっぱり気をつかいますよね。
本来は労働者の権利なので、気をつかう必要はないんだけどね。
どうしても、「自分だけ休んで周りに申し訳ない」みたいなこと考えちゃうんですよね。
まあ、周りの人たちも同じ基準で休む権利を持っているので、堂々と休むのが本来の姿なんだけどね。
「みんなで渡れば」みたいな感じだな。
いやあ、だからといって、「休んで映画見に行きます」とか言いづらいじゃない?
いやいや、それでいいのよ。
有休取得の理由には制限がないので、「遊びに行きたいから休みます」とか「家でぼーっとしていたいので休みます」とかでも構わないのよ。
オレも昔は「そんな理由で休むなよ」と思っていたけど、今は「労働者の権利だから」って割り切っているよ。
まあ、ここだけの話、みんなが有休を使い切るのを予定して、給料の設定をしているわけだけど。
それでいいと思うよ。
そういうもんなんですね。
もちろん、経営者がみんな同じように考えているわけではないし、もっと現場レベルの話で、課長とかが有休に理解がない場合なんかも、部下は「取りづらい」ってなると思うんだ。
ですよね。
なので、有給休暇の取得率を上げようとする動きは、前々からあるんだよね。
働き方改革のことか?
それも含めていくつかあるので、ちょっと説明しておくね。
ああ。
そもそもなんだけど、有給休暇は労働者に「時季指定権」というのがあるのね。
要するに、労働者が「何月何日に有給休暇を取得します」と言ってきたら、使用者は認めなければならないと。
さっき説明したとおり、理由は関係なくね。
いきなり言われても困るときあるぞ。
まあ、本来は、有休は事前に「取ります」って請求するものなんだけど、病気のときとかは当日でもOKってしている会社は多いよね。
そういうのはいいんだけど、忙しい時期に休みたいって言われると、正直、困るんだよな……
もちろん、「7日前までに請求しなければならない」みたいなルールは設定できるので、いきなり「あした休みます」みたいなのは避けられるんだけど。
そうだよな。
あと、使用者側には「時季変更権」というのがあって、労働者が指定してきた日を変更できる可能性はあるのね。ただ、「事業の正常な運営を妨げる場合」という厳しい条件付きなので、基本的には労働者が有利なんだよね。
まあ、そこは空気を読んでほしいところだよな。
正直、そうだよね。
まあ、ここで言いたかったのは、「有給休暇は労働者に与えられた権利なんだけど、実際には取りづらい」ってことね。
ですね。
じゃあ、「それを取りやすくするために、ルールがどう変わってきているか」って話になるんだけど、まず、「時間単位付与」というのがあって、文字通り1時間単位で有休が取得できるのよ。
例えば、「この日は定時より1時間早く上がるので、そこで有休を1時間消化します」みたいな感じかな。
聞いたことあるような気がします。
まあ、独身で親も元気なら、あんまり使う機会はないかもね。
でも、「子どもが熱出したんでお迎えに」とか「親の介護で」とか、そういったときに「2時間早く帰れたら」みたいな場面は出てきそうでしょ。
たしかに。
前は短くても「半日単位」しかなかったんだけど、さらに細かい取り方ができるようになったんだね。
ただ、時間単位にできるのは年に5日が限度なので、1日8時間の職場だったら最大で40回に分割できる感じかな。
へえ。
あと、「計画的付与」というのもあって、使用者と労働者が合意すれば、「何月何日は有給休暇を消化する日にしましょう」ってできるのね。
具体的にいうと、「12月30日から1月3日までの平日は有給休暇にします」みたいな感じ。
えっ?
年末年始って、有休が減っているんですか?
いやいや、これは会社が「そういう設定もできる」という話なので、「年末年始は最初から会社所定の休日だけど月給の人の給料は減らしません」ってやり方もあるよ。むしろ、そっちが主流なんじゃないかな。
そういうことか。
そして、働き方改革で追加されたのが、「年に5日は有休を取らせなければならない」というやつね。
本人が取ろうとしなかったら、「何月何日に休みなさい」って会社から指定してでも取らせないといけないのよ。
らしいね。
ちなみに、「有給休暇の日数が10労働日以上である労働者」という条件があるので、週3日勤務で社歴の浅いパートさんなんかは、この対象から外れるのね。
10日の人に5日取らせるってことは、20日の人は倍の10日になるの?
いや、これは「有休を10日以上持っている人に5日取らせる」というルールなので、10日の人も20日の人も、前の年と合わせて40日の人も、みんな5日なんだね。
そこは比例しないんだね。
だね。
もしかすると、今後は範囲が広がるかもしれないけど。
いずれにせよ、放っておいても有給休暇の取得が進まないので、政府もいろいろと動いているのが実情と言えるんじゃないかな。
おわりに
そんなわけで、今回は休日と有給休暇について説明してみました。連続勤務もほどほどに、ということで、休日のルールが決められているんだね。あと、自分の都合で休みたいときに、一定の日数までは給料の心配をしなくても大丈夫なように、有給休暇の制度があるんだね。