目次
専任技術者とは
建設業の許可が取りたいんですけど、資格がないとダメって聞いたんですよね。
塗装と、できれば防水の許可も取りたいんで、そうすると両方の技能士が必要なんですかね?
専任技術者になれる人
資格がないと絶対にダメというわけではないんですが、たしかにないと厳しいですね。
専任技術者……「専技」って言われたりするんですけど、技能士とか施工管理技士とか、一定の資格を持っている人が必要になるんですね。
で、資格がない場合は実務経験で要件を満たせる可能性もあるんですが、これがなかなか難しいんですよ。
資格は自分が取らないといけないんですか?
社員さんでもいいですよ。誰かいます?
いやあ、みんな試験とか受けたがらないんですよ。
まあ、オレもですけど。
……仕事もありますしね。
ちなみに、実務経験て、どれくらい必要なんですか?
工業系の高校とか大学とか出てると短くなるんですけど、そうでないと10年ですね。
あ、自分、工業高校ですよ。
何科だったんですか?
えーと、機械科です、機械科。
うーん、塗装とか防水だと、建築系の学科でないと厳しかったはずですよ。
【参考】技術者の資格(指定学科)表(抜粋)
出所:東京都 建設業許可(申請/変更)の手引 平成29年度より(一部改変)
許可を受けようとする建設業 | 学科 |
---|---|
左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ブロック工事業 塗装工事業 | 土木工学または建築学に関する学科 |
管工事業 水道施設工事業 清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学または衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業 鉄筋工事業 | 土木工学、建築学または機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学または機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学または機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学または建築学に関する学科 |
あとは……土木科とかも入ってますね。
でも、やっぱり機械科はダメみたいです。
まあ、たしかに実習でやったこととか、あんまり関係ないもんな……。
学科がうまく合えば実務経験5年で済むんですよね。
大卒だと3年まで縮まるんですけど、これがなかなか合わないんですよね。
じゃあ、10年なんですね。
これって、独立してからの年数なんですか?
そうなると、まだ6年しかないんですけど……。
いや、現場の経験なんで、雇われだったころの年数も入りますよ。
ああ、だったら余裕で10年以上ありますよ。
ちなみに、勤めてた会社って、塗装工事の許可ありました?
いやあ、会社でなくて個人でしたから。
まあ、会社でなくてもいいんですけど、許可がないと実務経験の証明が一気に難しくなるんですよ。
そこで働いていたことだけじゃなく、その業者が許可を受ける業種の工事をしていたことも証明しなくちゃいけなくなるので。
どうやって証明するんですか?
実務経験を証明するには
基本的には経営業務の管理責任者と一緒で、請求書と通帳のセットとかで証明することになりますね。
ただ、東京で申請するとなると、現場があった日を積み重ねて10年にしなくちゃいけないので、たいていは経管の場合よりも必要な件数が多くなりますよ。
施工期間が2か月とかあればわりと楽なんですけど、一日二日で終わる工事ばっかりやっていた業者さんですと、10年で1,000件を超えることもありますからね。
そりゃあ、めんどくさそうですねえ……。
それくらいの資料が必要になるんですけど、そこの親方って、協力してくれそうですか?
うーん、あんまり良くない辞め方だったんで、ちょっと頼めないかな……。
複数業種の専技になるには
そうすると、がんばって資格を取るか、または資格を持っている人を雇うのが現実的ですかね。
実務経験だと最低でもあと4年は必要になりますし、塗装だけでなく防水も取ろうとすると、さらにプラス10年ですからね。
ええ? うちの会社は塗装も防水も両方やってるんですよ。
ええ、実際はそうなんでしょうけど、技術者の実務経験は1業種ずつしか数えられないんですよね。
なので、2業種で技術者になろうとしたら、20年の経験が必要になっちゃうんですよ。
そりゃあ、厳しいすね……。
ちなみに、(2級建築)施工管理技士の「仕上げ」を持っていれば、塗装と防水の専任技術者になれますよ。
それだけじゃなくて、大工とか内装仕上なんかもいけるようになるので、がんばって取ってもらいたいところですよね。
専技の常勤性と役割
専技の常勤性
そういえば、仲間に資格持ってるやつがいるんですけど、そいつをこれから雇ったとしたら、どれくらいで許可取れます?
「その会社で何か月前から働いている」みたいな条件はとくにないので、資格のある人が入社してくれれば、すぐに申請できますよ。
ちなみに、そいつは個人で塗装の許可持ってるんですけど、うちのバイトになってもらえば大丈夫ですかね?
え? 自分で塗装屋さんやってるってことですか?
ええ。
そりゃダメですよ。
自分の会社で常勤で働いている人っていうのが条件なんで、会社名の入った保険証を持っていないと厳しいですよ。
じゃあ、保険に入ってもらえばいいんですかね?
いやいや、その人は自分の許可を受けるための専任技術者になっているでしょうから、他の会社の技術者になろうとしても、登録ではじかれちゃいますよ。
そうなんですね……。
掛け持ちで何社もいけちゃったら、いわゆる名義貸しみたいなのが出てくるでしょうからね。
たしかに……
まとめると、こんな感じですかね。
専技の役割
……あ、うちの父親はちょっと前まで現場監督やってたんで、建築の施工管理技士は持ってるはずですよ。
でも、もうトシなんで現場は無理だろうな……
いやいや、現場出なくて大丈夫ですよ。
むしろ専任技術者は現場に出ないのが基本なんです。
そんなんでいいんですか?
まあ、現場は現場で配置技術者っていうのが必要なんですけど、そっちは細かい証明がいらないんで、社長みたいに実務経験10年以上の人がいれば大丈夫なんですよ。
ああ、そうなんですね。
ええ。
で、専任技術者の役割って、見積書を作るときとか工事の進み具合を管理するときとかに、技術的な面から見ていくことなんですね。
なので、営業所にいるのが基本になっているんですよ。
ふーん、そんなもんなんすね。
ん? ってことは、現場と事務所で2人はいないといけないんですか?
いやいや、3,500万円以上の工事とかでなければ、現場の技術者と事務所の専任技術者は一人で兼任できるんですよ。
じゃあ、いずれは自分一人になっても大丈夫なんですね。
ええ。あんまりにも遠い現場でなければ大丈夫みたいです。
そしたら、とりあえず親父に頼んでみようかな。
実家でヒマしてるみたいだし。
お父さんなら、役員になってもらうのがいいかもしれませんね。
そしたら役員報酬になるんで最低賃金とか気にしなくて大丈夫ですよ。
そうすね。
ちょっと聞いてみますわ。
まとめ
お父さんがしばらく引き受けてくれるなら、その間に社長が技術者になれるようにがんばってもらうのがよさそうですね。
10年の実務経験だと、あと4年ですかね。
まあ、親父もまだ60代なんで、それくらいは大丈夫だと思いますけど。
いやいや、がんばって資格取りましょうよ。
塗装と防水の許可を狙うなら、施工管理技士がないと厳しいですよ。
あ、そうか。
2つ取るなら20年ですもんね。
そうです、そうです。
あと、さっき言った現場に配置する技術者の問題もあるんで、技能士でもいいから社員さんにも資格取ってもらったほうがいいですよ。公共工事狙うときの点数も上がりますし。
そうですね……。
自分一人で勉強するのもなんなんで、若いのと一緒にがんばってみますよ。
ちなみに、技能士の場合は2級だと合格後に3年以上の実務経験が必要になるんで、できれば1級が欲しいところですね。施工管理技士なら、2級でもすぐ技術者になれるんですけど。
どっちがいいですかね?
2つ以上の許可を目指すなら、施工管理技士がいいと思いますよ。
ちなみに、塗装と防水なら、2級建築の「仕上げ」ですから。
了解です。
若い人たちは、経験によっては2級の技能士からでもいいんじゃないですかね。
ただ、社員さんはいずれ独立したり転職したりしちゃうかもしれないので、いずれにせよ社長は絶対に取ったほうがいいですよ。
まあ、やるしかなさそうですね。
じゃあ、お父さんとの話がまとまったら教えてください。
保険に入る手続きとかもありますんで。
わかりました。
またお願いします。
補足
実務経験とは
実務経験の証明って、経管の証明より大変そうですね。
どうしても書類の枚数は多くなりがちですね。そもそも10年だと倍ですから。
10年前の請求書とか、捨てちゃっている人も多いですしね。
そういえば、税務関連の帳簿書類って、法定の保存期間が7年ですもんね。
たしかに、それ以上前だと見つからないケースが増えてくる気がしますね。
やっぱり、工事の業種がわかる請求書とかじゃないとダメなんですか?
そうですね。
1業種につき10年なので、そのへんは経管のときと一緒ですね。
ただ、経営経験と違って、人工出しでも認められるんですよ。
ああ、請負の経験じゃなくて工事現場の経験てことなんですかね。
そうなんですよ。
人工出しでも現場で作業はちゃんとしますからね。
でも、「工事現場の単なる雑務」っていうのはダメみたいです。
いわゆる「手元」ってやつですかね?
ですね。ただ、見習い期間も実務経験に入れられるみたいなので、実際は手元のころから数えていいんじゃないですかね。
でも、「10年間手元でした」っていう人の経験は認められないんだと思います。
まあ、手元しかやったことない人に見積書作ってもらうわけにはいかないでしょうからね。
それでいうと、実際に見積書や契約書を作っていたとしても、事務員さんの経験は技術者の実務経験に入れられないんですよ。設計とか現場監督は入るみたいですけどね。
現場で手を動かすかどうかは関係ないんですね。
あくまでも「技術上の経験」かどうかがポイントみたいです。
あと、電気工事と消防施設工事については、そもそも無資格者だと工事ができないんで、電気工事士とか消防設備士とかを取った後の経験しか認められないんですね。
専任とは
そういえば、現場の配置技術者と事務所の専任技術者は兼任できるって話でしたけど、経管との兼任はできるんですか?
ええ、同じ人がやっている場合も多いですね。
ただ、専任技術者は名前の通りですが、経営業務の管理責任者も、基本的には専任が求められているんですよ。
なので、どちらも常勤でないといけませんし、宅建業の専任取引士や建築士事務所の管理建築士との兼任も本当はダメなんです。
ああ、不動産屋と兼業の建設業者さんもけっこういますもんね。
でも、それだとつらくないですか?
ええ。ですので、「同一法人で同一の営業所」であれば、専任の宅建士とかと兼任できることになっているんですね。
で、経管と専技についても、やっぱり同一営業所なら兼任できるわけです。
なるほど。
ちなみに、専任技術者は営業所ごとに必要なので、例えば都知事許可でも営業所が2か所あったら、それぞれに専技が必要なんですよ。
まあ、営業所が2つある時点で、それなりの会社なんでしょうけどね。
中小企業といってもピンキリですもんね。
専技が退職するときの注意点
そういえば、専技は経管と違って、役員でなくてもなれるんですよね。
ですね。
ただ、従業員がなっていた場合だと、「転職して新しい会社で専技になろうとしたら、前の会社でも専技のままだった」みたいなケースがたまにあるんですよね。
それは困りますね。
ええ。
なので、技術者が退職するときは、社会保険だけでなく建設業許可の面でも手続きの漏れがないか確認しないといけないんですね。
どんな手続きが必要なんですか?
具体的には、新しい専技を決めて、都庁に変更届を出すわけです。
変更後2週間以内でないといけないので、事前に情報をつかんでおかないと厳しいですよね。
そもそも、後任がいなかったら許可が取り消されちゃいますし。
なるほど。
退職のときは社労士が相談を受けることが多いでしょうから、そのへんも押さえておきたいところですね。