社会保険料額の計算と建設業における労働保険料算出の仕組み

<2019.04.22 保険料率の改定に伴って一部修正いたしました>
 
今は個人なんで労災と雇用保険だけでいいってことでしたけど、会社にしたら社会保険にも入らないといけないんですよね?

ええ。
この前と同じ表ですけど、こんな感じですね。
 


労働保険料の計算方法と納付

で、全部で15%くらい余計にかかるって話でしたよね?

ええ。
元請工事が年に数件ということなんで、労災は抜きで考えてますけど。

ちなみに、労災はだいたいいくらくらいなんですか?

労災保険の保険料計算(一括有期事業)

そうですね……労災は建設業だけ特別な計算方法なんですよね
消費税抜きの請負代金に一定の割合を掛けて計算するんですけど、ちょっと確認してみましょうか。

【参考】労災保険料率(工事開始日が平成30年4月1日以降のもの)

出所:厚生労働省資料(一部改変)

事業の種類 労務比率(/100) 保険料率(/1000)
道路新設事業 19 11
ほ装工事業 17 9
建築事業(次段を除く) 23 9.5
既設建築物設備工事業 23 12
その他の建設事業 24 15


エアコンの取替工事とかは既設建築物設備工事業というのになるはずなので……0.23と0.012を掛けて……請負代金100万円につき2,760円ですね。

そんなもんなんですね。

ええ、なので、年間に元請工事の売上が1,000万円あったら、労災の保険料は27,600円になるわけです。

なるほど。
今のところ年に1,000万円もないんで、あんまり気にしなくてよさそうですね。

ええ。
で、残りの雇用保険とかを合計すると、だいたい給料の15%くらいになるんですよ。
でも、引き落としは従業員の分も合わせてなんで、その倍くらい持っていかれる気がしちゃうかもしれませんね。

え?
どういうことです?

労災は従業員の負担がないので、さっきの金額をそのまま納めればいいんですよね
でも、それ以外の社会保険は従業員負担ていうのがあるんですよ
給料から天引きされるやつです。

ああ、勤め人のころに取られてましたね。

ええ。
それを会社がまとめて納める仕組みなんで、実際の引き落とし額が大きくなるんですね。

ああ、そういうことか。

どれも給料が基準になるんですけど、保険料率とかに違いがあるんで、一つずつ説明してみますね。
従業員の負担割合にも違いがありますし。

雇用保険の保険料計算

まず雇用保険なんですけど、建設業の場合は今(平成31年度)、1.2%になってます
これを会社が0.8%、労働者が0.4%負担するんですね。

2対1なんだ。

まあ、今は結果的にそうなってますけど、9対5で1.4%のときなんかもありましたよ。
細かい話をすると、いわゆる「失業保険」とかの保険料は折半で「雇用保険二事業」というやつの保険料率が事業主側だけ加算されるんですけど、いずれにせよ、会社のほうが多く払うのは間違いないです。

なるほど。

労働保険料の納付

ちなみに、労働者負担分は毎月の給料から天引きするんですが、実際に納めるのは年に1回なんですね

ややこしいですね。

ええ。
例えば、月給30万円の人がいたら、毎月の給料……労働保険の場合は「賃金」ていうんですけど、そこから0.4%の1,200円を預かっておくんですね。

ふんふん。

で、1年間の給料が360万円になったとして、雇用保険料は1.2%の43,200円になるので、これをまとめて払うんです。

なるほど。

このとき、従業員から天引きして預かっているお金が1,200円×12か月分の14,400円あるんで、会社の負担分は28,800円で済むわけです。

うーん、なんとなくわかりました。

 


実際は、労災と合わせて「労働保険料」として納めるんですけどね。
ちなみに、保険料が高い場合なんかですと、3回に分けて引き落としにもできます。

へえ。

あと、一般拠出金ていうのがあって、これも労働保険料と一緒に納めるんですね
ただこれ、1,000分の0.02なんで、年間の賃金が1,000万円でも200円にしかならないんですよ。

なんで、そんな細かいことするんですかね?

前に石綿の健康被害が問題になったじゃないですか。
それの救済に使われるお金として、別枠で取ってるみたいです。

そうなんですね。

社会保険料の計算方法と納付

続いて社会保険ですけど、こちらはどれも会社と従業員で半分ずつ負担します
でも、保険料率は健康保険と厚生年金で倍くらい違いますよ。

そんなに違うんですね。
いくらくらいになるんですか?

健康保険(と介護保険)の保険料計算

まずは健康保険ですね。これは都道府県ごとにちょっとだけ違うんです
東京は今(平成31年4月)だと約10%なんで、月給30万円の人は、5%の15,000円くらい天引きされます。

ふんふん。

でもって、会社も同じく15,000円くらいを負担して、一緒に納付するわけです。

なるほど。

あと、40歳から64歳の人は、健康保険と合わせて介護保険料も払うことになるんですよ

ああ、そうでしたね。

こちらは全国一律で1.73%なんで、10万円につき……1,730円ですから、30万円なら5,000円ちょっと高くなる感じですかね。
これも折半なので、それぞれ2,500円くらいずつ負担が増すわけです。

うーん、どんどん高くなりますね。

厚生年金の保険料計算

でもって、これが一番高いんですけど、厚生年金は今、18.3%になってます
30万円で……55,000円くらいですかね。

高いすねえ……。

給料の2割弱ですからね……。
まあ、これも会社が半分出すんで、やはり負担は大きいですよね。

大きすぎますよ……。
これも年にまとめて払うんですか?

社会保険料の納付

いえいえ、社会保険の場合は、毎月引き落とされるんですよ

ああ、そこは違うんですね。

ええ。
あと、計算の基準になる「標準報酬」ていうのがあって、これは基本的に1年間固定になるので、毎月同じ額を払う感じですね

へえ。

例えば、さっきの月給30万円の人だったら、標準報酬月額っていうのが30万円になるんですけど、これは29万円から31万円の人も同じ額で計算するんですね。

【参考】平成31年度保険料額表(平成31年4月納付分から)(東京都)

出所:協会けんぽウェブサイト(抜粋・一部改変)

報酬月額
*円以上〜*円未満
標準報酬月額 健康保険料
(介護保険料含まず/含む)
厚生年金保険料
270,000〜290,000 280,000 13,860/16,282 25,620
290,000〜310,000 300,000 14,850/17,445 27,450
310,000〜330,000 320,000 15,840/18,608 29,280


なるほど。

なんで、従業員からは健康保険と厚生年金を合わせた44,895円を預かっておいて、その倍くらいの保険料を会社がまとめて支払うんですね。

ってことは、月給30万で9万円ですか!

そうなんですよ。
あと、子ども・子育て拠出金ていうのがあって、これは会社だけが払うんですけど、プラス0.34%なんで、30万円だと1,000円くらいですかね。

また拠出金ですか……。

こっちは児童手当に充てているみたいですね。

うーん、なんだかんだいって取られるんですね……。

建設業と社会保険

しかし、自分の負担もそれだけ大きいんだったら、若い子なんかは入りたがらないでしょうね。
みんなが入りたくないって言ったら、入らなくてもいいんですか?

いやいや、そういうわけにはいかないんですよ。
前にもお話ししたように、強制適用って言って、会社にしたら入らなくちゃいけないんですよね。

でも、入ってない会社もありません?

まあ、そうだったんですけど、少なくとも建設業に関しては、かなり厳しくなってますね。
ここ5年くらいで、国交省と厚労省が組んで集中的に対策したんですよ

狙い撃ちすか……

まあ、それだけ未加入の業者が多かったんでしょうね。
あと、社会保険料払ってない会社が安く請け負って、まじめに保険料を払ってる会社が受注できなかったら不公平じゃないですか。

まあ、そりゃそうですけど。
でも、元請も社会保険料のお金なんて払ってくれないでしょ。

そのへんも厳しくなってるみたいですよ。
見積書を出すときも、社会保険とかの法定福利費っていうのを入れて計算する流れになってますから

それで仕事取れればいいんですけど。

まあ、今は元請さんにもよるんでしょうけど、これからも厳しくなっていくのは確かですよ。
一応、理想としては、元請が社会保険料込みの代金をきっちり払って、下請の職人さんもちゃんと社会保険に入るようになって、それで若い人が建設業に入ってくるようになる……みたいなのがあるみたいですから。

そんなにうまくいきますかね?

まあ、若い人が入ってきてくれるかどうかは正直わかりませんけど、とりあえず社会保険の未加入対策は確実に進んでるみたいですよ

まとめ

で、保険料の話に戻りますけど、まとめるとこんな感じになります。

 


社会保険だけで30%くらいですもんね……。
みんな、よく払えますよね。

まあ、実際に負担しているのは半分なんですけど、やっぱり厳しいって話はよく聞きますよね。
なので、社会保険に入るときに、従業員に支払う額の総額はそれまでと変えないっていう会社さんもいますよね。

でしょうね。

ただ、それだと従業員さんの手取りがかなり減っちゃうんですよ。
月給30万円だった人だと、45,000円くらい引かれるわけですから。
それに所得税やら住民税も天引きされたら、25万円切っちゃうでしょうからね。

ああ、そりゃあ、嫌がるでしょうね。

ええ、なんで、「間を取って」みたいな話になることもありますよ。

なるほど。
それで納得してくれるのかな……

まあ、今でも国保と国民年金を払ってるんだったら、その負担はなくなるわけですし、社会保険にしかないメリットはけっこうありますからね

ああ、そういうことか……。
だいたい金額のイメージはつかめましたよ。
でも、きょうももう時間がないんで、メリットとかはまた今度、詳しく教えてくれます?

了解しました。
また連絡しますね。

補足

社会保険料の負担感


あらためて見てみると、社会保険料って高いですよね。

ええ。
労働保険抜きでも15%くらいですからね。


しかし、従業員の負担分も入れたら3割って、考えてみるとすごいですよね。
ひと月の人件費が100万円だったら、社会保険料だけで30万円くらい納めるってことでしょ?

ええ。
その場合だと、給料を払うときに15万円は天引きして預かっているはずなんですけど、あらためて現金を預かるわけじゃないですからね
なので、経営者からすると、30万円全部を会社が払っているような感覚になっちゃうこともあるみたいなんですよ


そうかもしれませんね。

建設業の労災(二元適用事業)


あと、建設業の労災は特別っていうのは聞いてましたけど、やはり我々みたいなサービス業とはだいぶ違うんですね。

ええ。
我々の場合は、従業員さんがいたら年間の賃金を計算して、それを基に労災と雇用の保険料をまとめて申告しますよね。


たしかそんな感じでしたよね。

これが普通のやり方でして、労災保険と雇用保険がセットになっているのは一元適用事業っていうんですね


へえ。

これに対して建設業の場合は二元適用事業といって、労災保険と雇用保険を別々に申告することになるんですよ
まあ、実際はまとめて労基署とかに申告書を提出することになるんですけど、用紙は別々になるんですね。


なるほど。

で、現場の労災は、さっき説明していたように、元請工事の代金を基に計算して、雇用保険は自社の従業員の賃金を基に計算するんです。
なので、元請工事をまったくやらない業者さんだと、雇用保険のみってこともあります。


ああ、そうか。

ちなみに、事務員さんがいる場合なんかだと、事務所にも労災をかけなければいけなくなるので、労働保険の番号が3つになるんですよね。
現場労災と事務所労災と雇用保険の3つです。


ややこしいですね。

こんなイメージですかね。

 

建設業の雇用保険料率


そういえば、建設業は雇用保険料も少し高いんですよね?

ええ、ほんの少しですけどね。

【参考】雇用保険料率一覧(平成31年度)

出所:厚生労働省資料(一部改変)

事業の種類 労働者負担 事業主負担 雇用保険料率
一般の事業 3/1,000 6/1,000 9/1,000
農林水産・清酒製造の事業 4/1,000 7/1,000 11/1,000
建設の事業 4/1,000 8/1,000 12/1,000


建設業は離職率が高いみたいなんですよね。
でも、失業率とかによって変動するんで、今はかなり低くなってるんですよ。
リーマン・ショックの直後なんかは、けっこう高かったみたいですけど。


なるほど。

こんな感じで、労働保険は業種によっていろいろ差が出てくるんですけど、社会保険はとくにそういうのがないので、その点はラクですかね。


しかし、建設業者の社会保険未加入対策は、だんだん厳しくなってる気がしますけどね。

まあ、営業許可がある業種はチェックしやすいですからね。
建設業の許可も、社会保険に入ってないと受けられなくなるって話じゃないですか


そうらしいんですよ。
なので、我々も社会保険についてある程度は知っておかないといけないんですよね。

そのへんはお互い勉強ですね。
 

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