外国人労働者が建設現場で就労可能なビザ:技能実習と特定技能の比較

<前々回からの続き>

外国人労働者が建設現場で就労可能なビザ:技能実習

外国人労働者が建設現場で就労可能なビザ:特定技能



技能実習と特定技能について、それぞれ大まかに説明してみましたが、かなり似ている部分もあればぜんぜん違う部分もあるので、そのへんも押さえておきますね。


お願いします。

技能実習と特定技能の比較

技能実習と特定技能の共通点


共通点として、まずは「職種限定」という点でしょうか。


特定技能もそうなんですね。


ええ。
技能実習と特定技能で内容はちょっと違うんですけど、どちらも一定の職種でしか働いてもらうことができないんですね。


うちみたいな鉄筋屋はどうですかね?


鉄筋屋さんだったら、技能実習でも特定技能でも大丈夫ですよ。


おお、安心しましたわ。


あと、計画の認定を受けて、その通りに実行しているかどうかチェックされる点も似ていますかね。


ああ、そんな話でしたね。


他には、建設業許可が必要になるのも、共通点の一つですね。


ああ、それは当然な気もしますね。


じつをいうと、技能実習は2019年の12月までだったら、建設業許可がなくても受け入れられるんですよ。


ほうほう。


でも、そこはこれから厳しくしていくみたいです。


ああ、社会保険みたいな感じですかね。


たしかに。
もちろん、社会保険の加入は、(適用事業所であれば)どちらの制度でも必須ですね。


でしょうね。


あとですね、建設業許可の話と同じで技能実習の場合は2020年の1月からなんですけど、なんと月給制が義務化される予定です。


ほう!


これもまあ、仕方ないといえば仕方ないんですよね。


というと?


「失踪」って、聞いたことあります?


ああ、逃げられちゃうことがあるんでしょ?


ええ。
で、建設業の技能実習はとくに失踪者が多いんですけど、その原因は「収入が不安定だから」って言われているんです。


まあ、たしかに……。


なので、特定技能は制度開始の時点から月給制でなくてはいけないんですね。
で、技能実習も2020年の1月からは、実習生の賃金を月給制にしなくちゃいけなくなるんです。


そりゃあ、厳しいですねえ。


ええ。
雨の日とかの扱いが難しくなるでしょうね。


たしかに……。


もう一つ、建設キャリアアップシステムに登録するのも、義務になるんですね。


ああ、カード持たされるやつ。


ええ。
あれも特定技能は最初から、技能実習は2020年1月から、登録が義務化されるんです。


へえ。
なんか、いろいろ面倒そうですね。


そうなんですよね。
まあ、建設キャリアアップシステムは2019年の開始から5年で全技能者の登録を目指しているみたいなんで、いずれ元請から言われたりすると思いますよ。


かもしれませんね。


主な共通点としては、こんなところでしょうか。


了解しました。

技能実習と特定技能の相違点


次は、技能実習と特定技能で違う部分ですね。


はい。

対象職種


まずですね、先ほど、「どちらも職種限定」と言いましたけど、技能実習と特定技能だと、外国人にやってもらえる仕事が少し違うんです。


そんな話でしたね。


ええ。
技能実習で2号以降に進める「移行対象職種・作業」と、特定技能で受け入れられる建設分野の職種を比較した表がこちらです。

技能実習の移行対象職種・作業と特定技能の受入対象職種
技能実習 特定技能
職種 作業 職種
さく井 パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築板金 ダクト板金
内外装板金
冷凍空気調和機器施工 冷凍空気調和機器施工
建具制作 木製建具手加工
建築大工 大工工事
型枠施工 型枠工事 型枠施工
鉄筋施工 鉄筋組立て 鉄筋施工
とび とび
石材施工 石材加工
石張り
タイル張り タイル張り
かわらぶき かわらぶき 屋根ふき
左官 左官 左官
配管 建築配管
プラント配管
熱絶縁施工 保温保冷工事
内装仕上げ施工 プラスチック系床仕上げ工事 内装仕上げ/表装
カーペット系床仕上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
サッシ施工 ビル用サッシ施工
防水施工 シーリング防水工事
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事 コンクリート圧送
ウェルポイント施工 ウェルポイント工事
表装 壁装 内装仕上げ/表装
建設機械施工 押土・整地 建設機械施工
積込み
掘削
締固め
築炉*1 築炉
鉄工*2 構造物鉄工
塗装*2 建築塗装
鋼橋塗装
溶接*2 手溶接
半自動溶接
特定技能から新設 トンネル推進工
特定技能から新設 土工
特定技能から新設 電気通信
特定技能から新設 鉄筋継手

*1 技能実習2号まで
*2 建設業者が実習実施者である場合に限る



ほうほう。
鉄筋屋の場合は「鉄筋施工」というやつになるんですね?


ええ。


こうやって見ると、特定技能は結構少ないですね。


ですね。
「海外で外国人向けの試験を実施できるか」とか、そういう事情を含めて業界団体とすり合わせた結果みたいですよ。


へえ。
これ、「とび」と「土工」って別なんですか?


ええ。
建設業許可だと「とび土工工事業」で一括りですけど、在留資格で考える場合は別々になっちゃうんですね。


ふうん。


大工と型枠大工も別物になってますし。


ホントだ。
大工工事は特定技能ないんですね。


ええ。
とびや防水なんかも今のところ特定技能に入っていないので、技能実習の3号まで終わったら、帰国するか外国人建設就労者受入事業に進むかの二択になっちゃいますね。


へえ。


ただ、これからも業界団体などと話し合いをして、年度ごとに対象職種を見直していくみたいです。


ほうほう。

送出し国


あと、外国人を呼べる国もちょっと違うので、一応、説明しておきますね。


ええ。


技能実習の場合、ベトナム・中国・フィリピン・インドネシア・タイの人が多いんですけど、実質的に呼べるのは、東南アジアを中心に15か国くらいですね。


ほうほう。


これに対して特定技能の場合は、とくに限定はないんですけど、今のところイランとトルコだけ除外されているようです。


なんでイランとトルコはダメなんです?


これはですね、いわゆる「強制送還」になったときに、向こうの国が引き取ってくれないのが理由みたいです。
これから変わるかもしれませんが。


へえ。


ただ、技能実習を修了した人か専門の試験に合格した人じゃないと特定技能にはなれないので、実際は技能実習で呼べる国とほぼ同じと考えていいでしょうね。


たしかに。


海外での試験も、今のところは技能実習で送出し国になっている国の一部でしか予定されていないようですし。


なるほど。

 

技能実習と特定技能における送出し国(2019.08.16現在)
技能実習 特定技能
二国間取決め R/D締結 二国間取決め
インド
インドネシア
ウズベキスタン
カンボジア
スリランカ
タイ
中国 ○*
ネパール
パキスタン
バングラデシュ
フィリピン
ブータン
ベトナム
ペルー
ミャンマー
モンゴル
ラオス

* 近日中に締結予定

出所:(技能実習)送出し国・送出機関とは(JITCO)/(特定技能)送出し国・送出機関とは(JITCO)



他には、さっき説明した採用からの一連の流れにも少しずつ違いがあるので、一つずつ比較していきますね。


はい。

外国人の受入時



まずは外国人を雇うときの違いですね。


ええ。


技能実習の場合は、送出機関と監理団体に間に入ってもらって、母国から外国人を呼ぶことになります。


でしたね。


監理団体から実習生の候補者を何人か紹介してもらって、テレビ電話や現地訪問で面談して選ぶ感じですかね。


なるほど。


特定技能は大まかに分けると3パターンあって、まずは自社で技能実習を受けていた人がそのまま移行するタイプですかね。
これが一番多いんじゃないでしょうか。


ですかね。


次に、ハローワークなどの求人から直接応募してくるパターンが想定されていますけど、特定技能外国人の転職が一般的になるのは、まだまだ先の話になると思います。


そんな話でしたね。


ええ。
で、もう一つはJAC(建設技能人材機構)に紹介してもらうパターンです。
これもまだ先の話になりそうですけど、全国の建設会社を相手にどうやって紹介していくのか、よくわからない部分もありますね。


たしかに。

計画の認定申請



次は計画の作成と認定ですね。


はい。


技能実習は受け入れる外国人ごとに技能実習計画を作成して、外国人技能実習機構から認定を受ける必要があります。


でしたね。


これは技能検定の合格を目標にして、そのためにどんな作業をしてもらうか、時間配分なんかも含めて細かく決めておかないといけないんですね。


大変そうですよね。


ええ。
なので、監理団体の作成指導が必須になっているんですね。


なるほど。


特定技能の場合は2種類の計画があるんですけど、技能実習みたいに一人ずつ作る必要はないんです。


ええ。


まずは、いわゆる「支援計画」です。
こちらは「母国語での相談をどうやって行うか」みたいな話になるんですけど、登録支援機関に支援を委託することもできます。


ふんふん。


それに加えて、建設業の場合は「建設特定技能受入計画」というやつを作って、国土交通大臣から認定を受けておく必要があります。


でしたね。


こちらも技能実習計画ほど細かいものではないんですが、たぶん登録支援機関が手伝ってくれると思います。


でしょうね。

計画の実施状況確認



続いて、監査や訪問指導についてですね。


はい。


技能実習は、監理団体が定期監査や訪問指導にやってきます。


ちゃんと給料を払っているか、とかを見られるんですよね。


ですね、あと、実習計画に沿って技能を教えているかどうかも、チェックされることになります。


でしたね。


さらに、外国人技能実習機構が、3年に1回のペースで立入検査をすることになっています。


そういえば。


これに対して特定技能の場合は、監理団体はもちろん登録支援機関の監査もなくて、FITS(国際建設技能振興機構)という団体が巡回訪問することになっています。


どれくらいのペースで来るんですかね?


それがですね……まだ細かいことは決まっていないようなんですね。
状況を見て、「不正が多かったら強化」みたいな感じになっていくんじゃないでしょうか。


へえ。

毎月の支払手数料



あとは、毎月の維持費みたいなやつですね。


ああ、ありましたね。


技能実習の場合は、監理団体と送出機関に監理費(管理費)を払っていくことになります。


5万円くらいでしたっけ?


ええ、それくらいが相場みたいですね。
で、特定技能はJACに受入負担金というのを払う必要があるんですね。


ああ、あれですね。


あと、自分たちで母国語相談とかできないんだったら、登録支援機関に対する報酬も出てきますね。


でしたね。

技能実習と特定技能のメリット・デメリット



最後に、今までの話を踏まえて技能実習と特定技能のメリット・デメリットを説明しておきますね。


お願いします。

技能実習のメリット・デメリット


まず、技能実習のメリットとしては、「3年間は自分の会社でがんばってくれる」という点でしょうか。


ほうほう。


3年間て、技能実習1号と2号の合計なんですけど、この間は転職することができないんですね。


へえ。


「まずは一つの会社でじっくり技能を身につけましょう」ということだと思います。


なるほど。


ただ、これのせいで「条件が悪くても辞めないだろう」みたいな考えになっちゃう経営者もいるので、ちゃんと実習が行われているかどうかは、きっちり監査される仕組みになっているんですね。


ほうほう。


この監査も含めて、制度がしっかり固まっているのも、技能実習のメリットですかね。


というと?


監理団体は厳しい要件を備えたうえで許可を受けているので、母国語相談などの支援体制は整っているんですよ。


ふんふん。


受け入れる会社のほうでも、実習計画を作る段階でいろいろ要件をそろえていくことになるので、初めて外国人を雇う場合であっても、ポイントを押さえることができるんですね。


なるほど。


その分、監理費がそこそこかかってしまうのは、デメリットといえばデメリットですね。


たしかに。


あと、技能実習のデメリットとしては、実習計画の制限がきつい点ですかね。


ほうほう。


技能検定に関する作業を中心に計画を組んで、実際にそれに従って作業をしてもらう必要があるので、やってもらう作業の自由度はどうしても低くなっちゃいますね。


そういうことですか。


なので、同じ作業について継続的に一定量の仕事がある職場でないと、活用するのは難しいかもしれません。


なるほど。

特定技能のメリット・デメリット


特定技能のメリット・デメリットは、技能実習の裏返しになっている面がありますね。


というと?


まず、技能実習が3年間は転職不可だったのに対して、特定技能にはそういう制限がないんですね。


ほうほう。


なので、雇っている側としては、せっかく仕事を教えても辞められちゃう可能性があるわけです。


なるほど。


まあ、これは日本人労働者なら当たり前の話なんですけど。


たしかに。


次に、支援体制の話ですけど、このへんも技能実習に比べると特定技能は弱いですね。


へえ。


外国人雇用に慣れていない会社向けに登録支援機関の制度が用意されましたけど、監理団体ほどの水準は求められていないので、正直、当たり外れは出てくるでしょうね。


ですかね。


その分、登録支援機関への手数料は、監理費より安くなるんじゃないかと言われていますけど。


なるほど。
そちらはメリットかもしれませんね。


ええ。
技能実習は「技能も日本語も基礎から教える」制度ですが、特定技能は「技能も日本語もそこそこのレベルの人を雇う」のが前提なので、支援も「それなり」になっているんですね。


そうなんですね。


そんなこともあって、技能実習ほど細かい計画が必要ないので、やってもらう作業にある程度の幅を持たせられるのも、特定技能のメリットと言えるでしょうね。


特定技能は、検定は受けないんですかね?


必須ではないですね。
ただ、特定技能2号は技能検定1級レベルが求められているので、将来のことも考えると、検定の合格は目指したほうがいいでしょうね。


なるほど。


特定技能2号になれば奥さんや子どもを日本に呼ぶことができますし、在留期間の制限もなくなるので、長期間働いてもらえる可能性が出てきますよね。


そうなってくれると、ありがたいですね。

まとめ


長くなりましたが、だいたいこんな感じでしょうか。



技能実習と特定技能

  • 職種は限定されている
  • 事前に計画の認定を受ける
  • 計画に沿って作業を行ってもらう
  • 計画の実施について監査等を受ける
  • 関係機関への手数料等が発生する



なんとなくわかりました。
メリット・デメリットも踏まえて、ちょっと検討してみます。


ええ。
またわからないことが出てきたら、ぜひ相談してください。


お願いします。

補足

外国人建設就労者受入事業とは


建設業の特定技能は外国人建設就労者受入事業がベースになっている、という話を聞いたことあるんですけど、どうなんですかね?


特定技能の制度を作るときに、参考にはしているでしょうね。
特定技能の支援計画と建設特定技能受入計画を合わせると、受入事業の「適正監理計画」みたいな感じになりますし。


へえ。


ただ、受入時とか監査体制とかは、どちらかというと技能実習に似ていますかね。


というと?


監理団体が特定監理団体になって、外国人技能実習機構が国際建設技能振興機構(FITS)になっているイメージです。
まあ、技能実習法の施行と実習機構の設立のほうが後なんですけど。



ほうほう。
たしかに、共通点が結構ありますね。


ええ。
対象となる職種も技能実習と同じですし。


へえ。


まあ、こちらは特定技能のような試験制度がないので、技能実習から移行するしかないんですけどね。


なるほど。


ただ、外国人建設就労者受入事業は2021年3月で新規受入が停止されて、2023年3月で制度終了が予定されているんです。


ああ、東京オリンピック対策って話ですもんね。


あと震災復興も目的みたいですね。


なるほど。
いずれにせよ、時限措置なんですね。


ええ。
なので、技能実習修了後の進路は、いずれ特定技能に一本化される予定です。
でも、そうなると対象外の職種が出てきてしまうので、そこは厳しいですね。


そうですね。

技能実習と特定技能に関わる“機構”


ところで、外国人に関係した「**機構」って、たくさんあるんですね。


ええ。
外国人技能実習機構をはじめとして、いくつか出てきますね。
ややこしいので、一覧表にしてみますか。

 

技能実習と特定技能に関わる“機構”一覧
名称 国際研修協力機構 国際建設技能振興機構 外国人技能実習機構 建設技能人材機構
略称 JITCO FITS OTIT JAC
法人の種別 公益財団法人 一般財団法人 認可法人 一般社団法人
設立日 1991/10/1 2015/1/15 2017/1/25 2019/4/1
技能実習
特定技能
建設就労者



「JITCO」というのは、初めて出てきましたね。


ええ。
技能実習法ができるまでは、ここが主導で実習生を受け入れていたんです。
技能実習でなく「研修」と呼ばれていたころからある組織ですね。


へえ。
だから国際「研修」協力機構なんですね。


ですね。
「ジツコ」と呼ばれていて、今でもそれなりに重要な役割を担っているようです。
Webサイトの情報も充実していますよ。


ほうほう。


ただ、新しい技能実習制度では、書類の提出先などはすべて技能実習機構になっていますね。


ふうん。
しかし、JITCO以外は、わりと最近できた組織なんですね。


ええ。
それだけ外国人受入の環境変化が激しいってことですかね。


なるほど。
まだ増えるんですかね?


どうなんでしょう……。
技能実習制度で不正が続いたので、実習生を保護するために技能実習法ができたんですよね。
なので、特定技能でも同じようなことが起きれば、特定技能法ができるかもしれません。


ふんふん。


そうしたら、「特定技能外国人支援機構」みたいなのができるかもしれませんね。


当たらなきゃいいですけどね。


ですねえ……。

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