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賃金:労働に対して支払われるお金に関するルール

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親戚の集まりで社労士の「おじさん」がいろいろ説明していくシリーズです。

アイコンデザイン:こなか かのこ様

文中の図をクリックすると拡大できます(例外あり)。

【参考】動画はこちら


はじめに


今回は賃金について説明してみますね。



大事な話だね。



給料とは違うんですか?



まあ、給料とか給与とか、いろいろ言い方があって突き詰めていくと微妙に違う部分もあるんだけど、あんまり気にしなくていいんじゃないかな。
労働法だと、基本的に「賃金」て言うね。



へえ。



要するに、働いたらもらえるお金のことね。
労働者を保護するために、賃金に関してどんな決まりがあるのか、ちょっと説明してみます。


賃金支払の5原則


まず、「賃金支払い5原則」というのがあって、賃金を支払うときに使用者が守らなくちゃいけない条件が5つあるんだけど、どんなのだと思う?



「いくら以上払わなければならない」とか?



ほうほう。



「毎月払う」ってのも入ってるんじゃないの?



うんうん。



他にはどんなのありますかね。
……「残業したら割増で払う」とか?



なるほど。



「有給休暇」なんかは入らないの?




どうでしょうねえ。



あ、「毎年、上げなければならない」は?




おお、いいところに気づきますねえ。



で、どうなの?
正解なの?



うーん、△が一つで、あとは不正解かな。
正解は「通貨で」「直接」「全額を」「毎月一回以上」「一定の期日を定めて」の5つでした。
なので、「毎月」っていうのが△ね。

労働基準法 第24条(賃金の支払)

1 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、(略)
2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、(略)




△一つだけか……



まあ、あくまでも「支払い」の5原則だからね。
ちなみに、「いくら以上」っていうのは最低賃金法で決められるのよ。このへんは後で説明するね。



了解です。



で、有給休暇は賃金というより労働時間とか休日の話になるのね。「一定以上の休みを与えなくてはいけない、そして、そのうち一定の日数には賃金を払わなくてはいけない」みたいな考え方かな。
あと、割増賃金も労働時間や休日に関係してくるので、こっちの話になるのね。



ほうほう。



ややこしいすね。
給料上げる話はどうなんです?



昇給については、とくに決まりがないのよ。



へえ、意外ですね。



まあ、このへんもそのうち説明しますよ。



わかりました。


通貨払いの原則




まずは「通貨で」なんだけど、これは「現金で」って意味なのよ。
なので、銀行振込をするためには、労働者の同意書とか必要になっちゃうのよね。



へえ。面倒ですね。
でも、それって労働者の保護になるんですか?



これはね、現物支給とかを防ぐためなのよ。
労働基準法は古い法律なので、銀行振込を想定していないんだろうね。



なるほど。



もちろん、銀行振込だと証拠が残るとか、メリットも大きいのよね。なので、外国人技能実習生に対する賃金支払なんかは、銀行振込が原則になってるよ。
新しくできた特定技能もそうなんだけど、そのへんの話はこの本に書いてあるので……


わかったわかった。


直接払いの原則




次は「直接払い」だけど、これは「本人に直接手渡し」ってことね。
労働者を紹介して、「この人が働いた分の給料は私にください」みたいなのはダメだと。



搾取はよくないと。



そうそう。
あと、昔の話だと思うんだけど、子どもを働かせて親がお金を巻き上げちゃうパターンとか。
社労士試験の勉強しているとき、「家族が取りに来ても渡してはいけない→○」みたいな問題があったからね。



うちは心配ないでしょ?



当たり前だろ。



まあ、今だったら「本人名義の口座に振り込む」くらいの意味でいいんじゃないかな。



ですかね。


全額払いの原則




「全額払い」はそのままの意味なんだけど、これの例外は税金や社会保険料の天引きね。



ああ、いろいろ引かれますよね。



言っとくけど、会社はもっと負担しているんだぞ。



まあまあ。
あと、弁当を支給して昼食代を差し引くことなんかもできるんだけど、その場合は労使協定とかが必要になるのね。
要するに、会社が勝手に給料からいろいろ引いてはいけない、ってことです。


毎月一回以上払いの原則




次は「毎月一回以上」だけど、これは「給料日のない月があったらダメ」ってことね。
年俸制でも、12分割以上にはしなきゃいけないの。



野球選手なんか「年俸何億」みたいな話があるけど、実際は毎月給料日があるんですかね?



プロ野球選手は労働者じゃなくて個人事業主なんじゃないかな。
そうすると、もらっているのは賃金じゃないので、毎月一回以上でなくても問題ないと。
もちろん、毎月払いの契約にすることもできるんだろうけど。



球団の社員てわけじゃないんだな。



まあ、だからトレードとか自由契約とかできるんだと思うけど。



「一回以上」ってことは、2回とか3回でもいいの?



そういうことだね。
ただ、次の「一定期日」も考えないといけないんだよ。


一定期日払いの原則




これは、「給料日は固定で」ってことね。
「今月は15日で来月は30日で……」とかやられたら、労働者は困るでしょ。



たしかに。



あと、「毎月第3水曜日」とかもダメなのね。
15日の月もあれば21日の月もあるので。
例外的にOKなのは「月末」だね。



たしかに、月末払いはよくあるもんな。



うちは月末締めの翌月25日払いですね。



うちは月末締めの翌月10日払いだな。



まあ、そんな感じになるよね。



「いつまでに払わなければならない」っていうのはないの?



これはとくにないんだよね。
「毎月一回以上」があるので、問題になるのは初回の給料だと思うのよ。2回目以降は絶対に毎月払われるので。
ただ、初回の給料日が遅くなると労働者が困るので、許されるのはせいぜい翌々月くらいなんじゃないかな。



へえ。



5原則はこんな感じかな。
共通しているのは、「こういう決まりがないと労働者の生活が不安定になる」って点だね。
「いつもらえるんだろう?」とか「いくらもらえるんだろう?」じゃ困るでしょ。



ですね。


最低賃金


で、「いくら以上払わなければ」というのは、さっき言ったとおり最低賃金法で決められているのね。


最低賃金が設定されている理由


いくら以上なんですか?



やっぱり「生活できないと」って考え方があるだろうからな……。



月に20万円くらいかな?



いやあ、20万円ももらっていない人もいるでしょ。



うん、たしかに「労働者の生活の安定」はキーワードなんだよね。
でもこれ、時給で決まっているんだよね。



正社員もですか?



そうなのよ。
正社員というか、月給制の人の場合も、月の労働時間から時給を計算して考えるのね。



へえ。
まあ、言われてみると、残業すると「1時間いくら」って付きますもんね。



そうそう。



日当も同じだよね?



もちろん。
やっぱり1日の労働時間で割って計算することになるよね。



なるほど。



でも、「月に何時間以上働かせなければならない」みたいな決まりはないので、最低賃金法があるからといって、労働者が確実に暮らしていけるようになるわけではないのよね。



たしかに。



でも、最低の時給が決まっていれば、あとは働いた分だけ掛け算されることになるよね。
だから、「働けど働けど……」という状況は防げるわけよ。



うんうん。



逆に、この決まりがなかったら、雇うほうは「なるべく安く」ってなるよね。



そういう職場は、人が集まらないんじゃないですか?



うん。でも、例えば地域の事業者が集まって「みんな時給300円にしようぜ」とかなったら、労働者としては「どこ行っても時給300円しかもらえない」ってなって困るでしょ。



たしかに……。



なので、最低賃金法で歯止めをかけている、と。
かりに「最低賃金に達しない賃金での労働契約」を結んだとしても、自動的に最低賃金の支払が義務付けられる仕組みになっているのよ。



なるほど。


最低賃金の決定方法


それで、最低賃金は時給いくらなんですか?



たしか、1,000円ちょいだよな?



うん、東京は今、1,013円だね。*
でもこれ、都道府県ごとに違うのよ。
*2020年11月1日現在



まあ、物価も違うでしょうからね。



そうだね。
なので、やっぱり都市圏だと高くて地方は低い傾向があるんだね。



やっぱり東京が一番高いの?



そうだね。
次が神奈川なんだけど、今は1円しか差がないんだよ。



だ……埼玉はどうなの?



埼玉は928円なんで、85円も違うんだね。
月に160時間働いたら……13,600円の差が付く計算だよ。



結構、差がありますね。



だね。
なので、埼玉の会社の社長は、「荒川の向こうには工場作れない」みたいな冗談を言うらしいよ。払わなくちゃいけない給料が違うからね。



半分本気だろ、それ。



まあ、切実な話だよね。



ん?
例えば埼玉県民の人が東京の会社で働く場合なんかは、どうなるんですか?



ああ、そこは会社の所在地が基準になるのよ。
正確に言うと「事業場の所在地」なので、「東京本社と埼玉支店」とかだったら、それぞれの地域の基準に合わせるのね。
まあ、「全国一律」にしている会社もあるようだけど。



へえ。




あと、「特定最低賃金」というのもあって、業種によっては県の最低賃金よりも高い額が設定されていることもあるんだよね。
まあ、東京なんかは地域別の最低賃金が高いので、あんまり気にしなくてもいいんだけど。



ふうん。



で、この最低賃金が、基本的には毎年10月の頭に改定されるのね。
もちろん、上がっていくんだけど、今年はやっぱり特殊な状況だったので、「基本は据え置き」みたいな感じになったんだよね。



ニュースにもなってたな。



だね。
で、東京は据え置きで神奈川は1円アップだったので、少しだけ差が縮まったんだね。



普段はもっと上がるんですよね。



うん。ここ何年かは、毎年30円弱上がっているね。
今は全国平均が902円なんだけど、これを「毎年3%程度上げて1,000円以上に」っていうのが、当面の目標になってるみたいだからね。



お客さんに請求する額も、それだけ上げられるといいんだけどね……。



まあ、経営者としては人件費が上がることになるんで、なかなか厳しい話だよね。
だから今年は、「上げるかどうか」の会議もかなり揉めたみたいだよね。



そりゃ、そうだよな。


最低賃金を下回る賃金を設定できる場合


最後に一応、「最低賃金の減額の特例」ってやつを説明しておきますね。

【参考資料】
最低賃金法第7条の減額の特例許可事務マニュアル/厚生労働省労働基準局 賃金課(PDF)




そんなのあるの?



まあ、あくまでも特例なので、普通は対象外だと思ってくださいや。



だよね。



まずは、障害者雇用のケースね。
いわゆる作業所とか、そういうのが該当するかな。



ふんふん。



あと、認定職業訓練を受けている人なんかも、一定の期間は減額の対象になる可能性がありますね。



なかなか限定的な話だね……。



そりゃあね。
ただ、このへんは「うちは対象じゃない」ってわかりやすいんだけど、あと2つが厄介なのよ。



というと?



まず、「試の使用期間中の者」というのがあるんだけど、これは単に「試用期間だから」程度じゃダメなんだよね。いろいろ要件があるのよ。



そりゃあ、そうか。



もちろん、「試用期間1年」とか設定したからといって、認められるわけではないのよ。
逆に「14日以内」って説明を見かけることもあるんだけど、これも違うらしいのよね。
期間については、最長で6か月っていう基準があるみたい。



へえ。



もう一つ、「軽易な業務に従事する者」というのがあるんだけど、これもいろいろ基準があるのね。



まあ、会社が「これは軽易な作業だから」と言って認められたら、苦労はないわな。



だよね。
イメージとしては、倉庫や事務所で留守番する人とかかな。「倉庫番」みたいに荷物を動かすような作業自体はしないで、「たまに電話がかかってくる」とか「気づいたら掃除する」とか、そういう感じ。



「拘束時間はそれなりにあるけど、そんなに疲れない」みたいな感じですかね?



そうそう。
「軽易」と「断続」がキーワードかな。



そういう仕事でも拘束時間に対して丸々給料を払うとなったら、会社はつらいもんな。



だね。
で、この4パターンに共通しているのは、「減額特例の許可申請」というのを出して、許可を受けないと適用できないってことね。
なので、結論としては「労働者を雇うときは最低賃金を下回ってはならない」ってことになるんじゃないかな。



結局、そういうことになるんだな。
まあ、そもそも最低賃金で募集しても人は集まらないんで、それだけの給料を払えるような仕事を取ってこないといけないんだけどな。



大変なんだね……。


おわりに


そんなわけで、今回は賃金の中でも「支払い方法」と「最低賃金」に絞って説明してみました。
毎月決まった日に給料日があって、働いた分のお金がちゃんと手に入るように、支払い5原則や最低賃金のルールが決まっているんだね。



Posted in 労働法図解

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