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募集・採用:労働契約が成立する場面でのルール

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親戚の集まりで社労士の「おじさん」がいろいろ説明していくシリーズです。

アイコンデザイン:こなか かのこ様

文中の図をクリックすると拡大できます(例外あり)。


はじめに


今回は労働契約が始まるときの話をしてみます。



入社するときのルールですかね。



まあ、会社とは限らないんだけど、労働者から見たら「働き始めるとき」のことになるかな。
その前の段階として、就職活動の話なんかもしてみようと思っています。



おお、それ聞きたい。



ちなみに、使用者からすると、「募集・採用」ということになりますね。



たしかに。



まず、労働契約というのは、労働者の「使用されて労働します」という意思と、使用者の「賃金を支払います」という意思が組み合わさると、つまり労働者と使用者が合意すると、成立する仕組みになっているのね。

 




言われてみれば、そうかもしれませんね。



労働契約自体はそれだけの話なんだけど、そもそも合意する前にどんなやり取りがあるのかを説明していきますね。



それが就職活動の話?



そうそう。


募集・採用時のルール


というわけで、まずは就職活動の話ね。
使用者側から見ると、募集・採用活動になると。



うんうん。


採用選考


人を雇うときって、普通は面接しますよね。



そりゃあ、そうだろ。



「来る者拒まず」みたいなところでなければ、使用者は面接や筆記試験を通して「雇うかどうか」を判断することになるわけだけど、この判断はわりと自由にやっていいのね。
極端な話、「こいつは虫が好かないから雇わない」とか。



そんなの通用するの?



労働者の保護を考えたときに、それでいいんですかね。



例えば、「はっきりした根拠はないけれど、この人を雇ったら職場の雰囲気が悪くなるかも」みたいなのはあると思うんだ。
特に小規模な事業者の場合、問題社員がいると職場全体がおかしくなっちゃうからね。



そうだよな。



でも、前に説明したとおり、雇用契約を結んだからには、解雇、つまり会社側から辞めてもらうのはかなり難しくなるのよ。



そうなんだよな。



なので、採用のときは、使用者側にそれなりの自由が与えられていると。



なるほど。



もちろん、面接を受けた労働者というか、この時点では候補者とも言えるけれど、そちらはそちらで「受かっても断る権利」みたいなものはあるんだ。



言われてみると、そうだろうね。



他の会社に取られちゃうこともあるしな。



そっか、同時に何社も受ける可能性あるもんね。



だね。
もちろん、一つの会社しか受けていなくても、断ることはできますよ。



気が進まない人に入社してもらったとしても、すぐに辞められたら、そっちのほうが困るしな。



たしかに。



でも、会社が自由に選べるからといって、「女性だから採用しない」みたいなのはまずいんじゃないですか?



お、よく気づいたね。
おっしゃるとおり、「防犯上の要請」とか、そういった合理的な理由がない限りは、「女性だから不採用」というのは認められないのよ。

 




ですよね。



このへんは男女雇用機会均等法なんかも絡んでくるのね。
でも、仮に裁判になって会社側が負けたとしても、「性別を理由とした不採用は違法なので……この人を採用しなさい」みたいな話にはならないんだよね。



そもそも、「女性だから不採用」なんて伝えないだろ。



そうなんだよね。
なので、実務上は「採用するかどうかは使用者側の判断で」ということになるんじゃないかな。



「本当はお前が嫌いだからだよ」みたいなのもあるってことか……。



まあ、ないとは言えないかな。
実際に伝えるときは「厳正なる選考の結果」みたいに書くと思うけど。



しかし、男女差別も黙認というのは意外ですね。



うーん、もちろん差別はダメなんだけど、「結果的に男性ばかりの職場」みたいなのは出てくるよね。
あくまでも「雇用『機会』均等」だからね。



どういうこと?



運動会の徒競走なんかでも議論になるけど、「『結果』じゃなくて『機会』の平等」という話よ。
スタートさえ公平にしておけば、ゴールまで「みんな一緒に手をつないで」みたいにする必要はないでしょうと。



ああ、聞いたことあるかも。



あれと同じような感じで、採用結果にまでは厳しいこと言われないのよ。
公平に選んだ結果、偏ることもありますよねと。



ふうん。


募集


でも、その手前の募集段階については比較的わかりやすい制限があって、こちらはきちんと守っているかどうかを厳しくチェックされることになるかな。



どんな制限なの?



募集するとき、つまり労働者に雇用の機会を与えるときは、男女を均等に扱わないといけないんだ。
さっき言ったような合理的な理由がない限り、「男性募集」とか「女性募集」というのはダメなんだね。



正直、うちの職場は女性じゃきついぞ、体力的に。



面接の結果、「この人は能力的にうちでは通用しない」と判断したら採用しなければ済む話なんだけど、入口の段階で「男性限定」というのは基本的にダメなんだ。
求人広告を出すときに「重量物(20kg程度)の運搬作業があります」とか書いておけば、体力に自信のある人しか応募してこないとは思うんだけど。



たしかに。
若くて体力のある人に絞り込めそうだな。



まあ、気をつかう部分だよね。
ちなみに、年齢についても制限があるのよ。
一部の例外を除いて、「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」という決まりがあるのね。



これも「機会」の均等でいいんだよな?



そうだね。
なので、「40歳未満募集」とかはできないけれど、あとは面接等で判断すると。



なるほど。



でも、警察官や消防士の試験て、年齢制限ありません?



そうなんだよね。
役所の募集なんかも、たいていは年齢制限あるんだけど、公務員はやっぱりちょっと特殊なんだろうね。



そういえば、公務員試験て、高卒と大卒で違うでしょ。
あれって、学歴でフィルターかけるのは問題ないってことなの?



あれは「受験資格」に近い感じかな。
「この試験を受けるには、大学卒業、または卒業見込みが要件となります」みたいな。



ああ、そういうことか。



こうやって資格で制限するのは、民間でも問題ないのね。
例えばだけど、病院で医者を募集しているのに、医師免許を持っていない人が来たら困るでしょ。



たしかに。



なので、募集のときに「性別」か「年齢」を限定すると問題になる可能性がある、というのが現状ですかね。



で、募集の段階で制限をかけなければ、あとは自由に選んで構わないと。



まあ、それが実情じゃないかな。
繰り返しになるけれど、とにかく解雇が厳しく制限されているからね。
その代わりといってはなんだけど、採用のときは会社側が納得できる形で選んでもらいましょうと。



バランスってやつだな。


求人方法


そもそもなんだけど、就職活動って新卒のときだけじゃないでしょ。



もちろん。



他にはどういうのがあるの?



新卒じゃない場合は「中途採用」と呼ばれることが多いけど、いろんなパターンがあるよね。
使用者側から見たら「募集活動」になるわけだけど。
ちなみに、今のバイトはどうやって見つけたの?



ネットで見つけて、応募したんじゃないかな。



そのとき、「正社員募集」みたいなのもあったでしょ。



たしかに。



そうやって、転職サイトなんかで求人の情報を公開するのも、かなりメジャーな方法だよね。
今はネットで仕事を探す人も増えているんだろうけれど、就職情報誌や折り込みチラシもまだまだ活用されているんじゃないかな。



ハローワークもあるだろ。



もちろん。
ハローワークの正式名称は「公共職業安定所」というんだ。
まあ、国がやっている職業紹介所みたいなものだよね。



昔は「職安」ていったよな。



だね。
ハローワークや転職サイトに共通しているのは、会社の求人情報が求職者、つまり仕事を探している人に届くまでの間に、第三者が入っている点だね。



どういうこと?



逆に第三者が入っていないと、会社の求人情報を求職者が直接受け取ることになるわけだよね。
例えば自社のウェブサイトで「採用情報」なんてページを作っておく方法などが考えられるんじゃないかな。



そういうことか。



でも、このやり方だと、そもそも求職者がその会社のサイトを見てくれないことには始まらないわけでしょ。
要するに、最初から自分の会社に興味を持ってくれている人だとか、関連情報からたまたまたどり着いた人だとか、そんな具合に求人情報の受け手が限られちゃうわけだよね。
そうなると、「なるべく多くの人に求人情報を届けたい」というのが難しくなるよね。

 




たしかに。



ここに転職サイトやハローワークが入ることによって、不特定多数の「仕事を探している人」に向けて情報を届けられるようになるのよ。

 




たしかに、バイトを探すときって、最初から「あの会社で働きたい」って決めているわけじゃなくて、「厨房で時給の高いところないかな」みたいな感じになるよね。



だよね。
なので、逆に求職者から見ると、転職サイトなどを通して多くの求人情報を手に入れられると。

 




そう考えると、助かるよね。



そういえば、新卒のときは会社名から入りましたけど、転職を考えていたときは、「自分の経歴を生かせる業種で、条件の良いところないかな」って探していましたね。



でしょ。
もちろん、バイト探しや転職のときも「この会社に」って決め打ちすることはできるんだけど、必ずしもその時期に募集しているとは限らないしね。



たしかに。



なので、転職サイトや就職情報誌を提供している職業紹介の事業者などが間に入って、求職者と求人者を効率的に引き合わせるような仕組みができているんだね。
ハローワークも職業紹介事業者の一つになるかな。

 




へえ。



職業紹介事業者などの第三者を挟まないで直接情報発信する方法としては、さっき言った自社サイトの他に、会社の前や道路沿いなんかに看板を出すやり方なんかも定番だよね。



うちも出しているな。



昔からある方法だよね。
飲食店でもよく見かけるけど、「このお店気に入ったな、ここで働いてみたい」みたいなのがあるんだろうね。



ですかね。



あとは、会社側が最初から「この人」って決め打ちで声をかけるパターンとか。
いわゆる「引き抜き」ってやつだね。



学生には関係ないでしょ。



そうとも限らないよ。
何かで実績作って話題になったら、関連する企業から誘いがくるかもしれないし。



スカウトみたいだな。



ドラフト会議とか。



なんか、別世界って感じだよね。



まあ、そういう可能性もあるって話よ。



ふうん。



就職活動・採用活動については、こんな感じかな。


労働契約成立時のルール


次は、就職活動・採用活動が無事に終わって、労働者と使用者の関係が生まれるときの話ね。
要するに、契約を結ぶときのお話。



言われてみると、就職活動中はまだ労使関係ないんですね。



厳密に言うと、労働組合法なんかは「就職活動中から労使関係」みたいな考え方もあるんだけど、そのへんは置いておきましょうか。



ええ。



で、労働契約が成立すると労使の関係も出てくるわけだけど、その契約についても、やっぱりいろいろとルールがあるんだね。



でしょうね。



なにしろ、ずばり「労働契約法」というのがあるくらいだから。



へえ。


労働契約の締結


最初に言ったとおり、労働契約自体は、労働者の「使用されて労働します」という意思と使用者の「労働に対して賃金を支払います」という意思が一致して合意に至れば、成立するのね。

 




実際は、「契約書にハンコを押したら」って感じなんですかね?



いや、契約書がなかったとしても、合意さえしていれば契約は成立するんだ。



「口約束でも約束は約束」ってやつですか。



まあ、契約書を残しておくのが無難だとは思うけれど。

 




ですよね。



ただ、労働契約自体は、繰り返し言っているように「働きます」「給料払います」だけの約束なので、「そんな契約した覚えはない」みたいな話はそうそう出てこないと思うのよ。



そうなの?



どんな仕事をするとか、いくら給料を払うとか、そういう話は別枠になるわけだからね。
なので、「まったく仕事しない」とか「給料一円も払わない」とか、そういう場合でもなければ、契約違反とまでは言えないかもしれないと。



そんなんで通用するんですか?



もちろん、そんなわけないよね。


労働条件の明示義務


実際には、労働契約を結ぶときに、使用者には「労働条件の明示」というのが義務付けられているんだ。



さっきの「どんな仕事」とか「いくら払う」とか、そういう話ですか。



そうそう。

労働基準法 第15条(労働条件の明示)

1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(略)




で、この「明示しなければならない」労働条件も決められているのね。



例えば?



主なものとしては、「いつまで」「どこで」「どんな仕事をして」「いつ休めて」「いくらもらえるのか」といったところかな。

労働基準法施行規則 第5条

使用者が法第15条第1項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。ただし、(略)
一 労働契約の期間に関する事項
一の二 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(略)

 




「いつまで」も必要なのか。



だね。
ただ、いわゆる正社員の場合は特に期間を決めないので、ここは「期間の定めなし」になるかな。



なるほど。



あと、この労働条件を明示する方法にも、やっぱりルールがあるんだね。



口頭じゃダメとか。



そんな感じだね。
「書面の交付」が原則なんだけれど、最近は労働者が希望すればメールでのやり取りもできるようになったんだ。
まあ、労働契約法には「できる限り書面により確認」とあるし、やっぱり書類を作るのが無難なんじゃないかな。



だよな。



なので、実務上は「労働条件通知書」を作って使用者から労働者に労働条件を明示したうえで、雇用契約書にお互いのハンコを押すことになると。

 




これで「話が違う」みたいなトラブルを防げるんだな。



まあ、基本的には。
ただ、労働条件通知書に盛り込むのは最低限のものになるので、もっと細かい職場のルールなどは「詳細は、就業規則の第○条から第○条」みたいにするよね。



たしかに。



そもそも、就業規則って何なの?



そうなるよね。
この際なので、就業規則についてもちょっと話しておくね。


就業規則とは


就業規則は、平たく言うと「職場のルールブック」みたいなものかな。
個別に労働契約を結ぶときに、いちいち細かいルールまで話し合って決めていたら大変でしょ。
なので、その職場に共通するルールを設定しておきましょう、という感じかな。



へえ。



それって、会社の都合なんじゃ……



いやいや、そうとも限らないのよ。
例えばだけど、休日に関するルールを決めておかないと、「あの人だけ休み多いぞ」みたいなことが起きかねないでしょ。



たしかに。



なので、一つには「職場の環境を公平に保つ」という効果があると思うんだよね。



なるほど。



もう一つは、「就業規則に定められた条件は、その職場の最低ラインになる」という効果ね。



というと?



例えば、時間外労働の割増賃金は、2割5分、つまり25%増しという話を前にしたよね。



ええ。



でも、あれはあくまでも最低限のルールなので、場合によっては30%増しとかにもできるのよ。



おお、そうなんですね。



なので、ある職場で「うちは30%増しにしましょう」となったら、就業規則に「時間外労働した場合の賃金は通常の1.3倍」みたいなことを書くわけだね。

 




ほうほう。



ちなみに、当然だけれど、「うちは20%に」ということにして就業規則に定めたとしても、法律で決められた最低限の率を下回っているので、その部分は無効になって、法律どおり25%になるんだ。

 




そりゃあ、そうだよな。



話を元に戻して、さっきの30%増しにした職場で新しく契約を結ぶ人に対して、「時間外の割増は25%で」と提示して相手が納得したとしても、それは通用しないのよ。
その取決めは無効になって、その人の割増率も30%になると。

 




なるほど。それが「最低ライン」ということですね。



そう。労働者の保護につながるわけだよね。
そういう効果があるからだと思うんだけど、就業規則に盛り込む内容も決められているんだ。

労働基準法 第89条((就業規則の)作成及び届出の義務)

1 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項




労働条件の明示のときに出てきた文言と似ていますね。



うん。ここはやっぱり、つながってくるよね。
あと、「労働者が少ないのに無理して共通ルールを作ることもないでしょう」という考え方があるからだと思うんだけど、作成が義務付けられているのは「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に限定されているんだ。
もっとも、10人未満の職場でも、就業規則を作ることはできるんだけど。



へえ。



就業規則については他にも細かいルールがたくさんあるんだけど、「職場の共通ルールを作っておくと、それが最低ラインになる」という考え方だけ押さえておけばいいんじゃないかな。



了解です。



そんなわけで、労働契約が成立するとき、つまり契約を結ぶときのポイントは、「労働条件の明示」に尽きるのではないですかね。



労働者としては、労働条件をよく確認することですかね。



だね。


本採用までの流れ


じつは労働契約を締結した後にもいくつかポイントがあるので、最後にちょっと説明してみますね。



契約書を交わしても油断できないってことですか?



そこまで大げさな話じゃないと思うんだけど、契約書にハンコを押した人が必ずしもその会社でずっと働くとは限らない、ということかな。



そういえば、初日の朝に「やっぱり無理です」って事件があったな……



それは例外ね。


内定


一つ目は「内定」の話だね。
特に新卒採用のときに問題になるんじゃないかな。



新卒以外でも内定ってあるのか?



中途の場合でも、「今の会社を辞めるのは少し先になる」とか「新しい会社でプロジェクトが始まるのは少し先になる」とか、そういう理由で契約を結んだ日と働き始める日の間が開くことはあるよね。



たしかに。



もっと言えば、「来週から来てください」みたいな話でも、契約締結日と働き始める日はずれるんだよね。



まあ、そうかな。



まあ、そんな感じで「ずれ」が小さい場合は問題が起きる可能性も小さいと思うんだけど、新卒の場合は下手したら内定から入社まで1年くらい開くでしょ。
そうすると、「事情が変わって」みたいな話が出てくる可能性も比較的高くなると。



なるほど。



「やっぱり卒業できませんでした」とか?



それはあるだろうね。



同級生でもいましたね。



うん。
逆に会社の経営が悪化して「やっぱり雇えません」ということもあり得るのよ。



そうかもな。



入社日は4月1日だったとしても、そこから始まる労働契約がすでに成立しているのだとしたら、それを一方的に解除するのはまずかろうと。



だよな。



そもそも、何をもって「内定」とするか、という話もあるんだけれど、新卒採用を行うような企業だったら、「内定通知」みたいなものを出すと思うのよ。
これが使用者側からの「労働に対して賃金支払いますよ」という意思表示ね。



ふんふん。



で、その前提として学生さんは採用試験を受けに来ているんだから、「その会社で労働しますよ」という意思表示はされていると。



たしかに。



なので、遅くとも内定通知が出された時点では、労働契約が成立していると考えられるんじゃないかな。
もちろん、その前に口頭でやり取りがあるだろうから、そのへんのいわゆる「内々定」と呼ばれる時期にしても、やっぱり微妙な話になるんだけれど。



へえ。



いずれにせよ、「内定=労働契約成立」と考えると、内定取消は解雇と同じ扱いになるんだね。
なので、使用者から「やっぱり雇えません」というのは、かなり難しい話になってくるのよ。



ちょっと安心したかも。



まあ、そういう事情もあるので、例えば大学3年生の3月に早々と「来年からよろしく」となったとしても、正式に内定通知が出るのは4年生の秋ごろ、みたいな話が出てくるんだね。



その間は安心できないってこと?



まあ、口約束でもある程度の責任は出てくるんだけど、書類がある場合に比べるとちょっと弱いかもね。
もちろん、それなりの理由がないと「やっぱり内定出さない」というのは通用しないと思うけど。



そりゃあ、そうだよな。



まあ、実際問題として、裁判になったら労働者が勝って、解雇無効のように契約の解除が無効になるかもしれないけれど、入社前からそんなに揉めた会社でがんばれるかという話になったら、ちょっと考えちゃうよね。



たしかに。



ということで、新卒採用の場合は、内定、というより内定取消の問題が出てくる可能性もあるんだね。
ちなみに、労働者側からの「やっぱり辞退します」は、これも入社後と同じで、いつでも理由なく認められるんだ。



厳しいねえ。



まあ、「来年からその学校には募集案内送らない」みたいな話が出てくる可能性はあるだろうけどね。



誰も得しないけどな。



だね。


試用


契約成立から本採用までのポイントの二つ目は、「試用期間」の話ね。



ああ、そんなのありましたね。



平たく言うと「お互い様子見の時期」みたいな感じかな。



入社前の内定取消が解雇と同じレベルだったら、入社後だってそうだろ?



まあ、そうだね。
ただ、試用期間中に「この人はうちの会社でやっていけないな」となった場合とか、その程度にもよるんだけど「本採用拒否」という可能性はあるのね。
もっとも、新卒採用の場合は一から育てるのが前提なので、「能力不足」で本採用拒否はかなり難しいと思うけれど。



でしょ。



もちろん、絶対に大丈夫というわけではなくて、「一緒に働いてみたらあまりにも協調性がなくて、この人を残したら組織がめちゃくちゃにされちゃう」みたいな場合だったら、試用期間でサヨナラもあり得るんじゃないかな。



そのへんは……大丈夫だと思うけど。



あとは、「面接のときに嘘ついていました」とか。
要するに、経歴詐称ってやつね。



それも大丈夫だと思う。



頼むよ……。
しかし、試用期間て、どれくらいまで設定できるんだ?



とくに決まりがあるわけじゃないけど、よく「3か月から6か月」と言われるね。
3か月に設定しておいて、「もうちょっと様子を見たい」となったら延長するようなやり方もあるみたい。



そういえば、大学の同級生で、「3年目だけどまだ試用期間」と言っているのがいますよ。



まあ、会社がそういう設定をしているんだろうけど、それで実際に3年も雇っておきながら本採用拒否なんてしようとしたら、なかなか大ごとになるだろうね。
もちろん、「試用期間中は有給休暇なし」とか、そういう運用ができるわけでもないし。



そうなんですね。



実際に効果があるわけではないので、試用期間をいたずらに長く設定するのはお勧めできないかな。
労働者のやる気をそぐことにもなるだろうからね。



だよな。



ということで、労働契約の成立から本採用までに「内定」と「試用」という期間が出てくる可能性はあるんだけど、労働者としては、必要以上に心配する必要はないんじゃないかな。



了解です。



逆に使用者としては、内定期間と試用期間も、契約を解除するのは難しいと考えておくのが無難だろうね。

 




まあ、そうだよな。


おわりに


今回は入社時のルールについて説明してみました。働き始めてから「話が違う」とならないように、労働契約を結ぶときには使用者が労働条件を明示しなければならないんだね。あと、募集のときに性別や年齢の条件を付けることには制限があるけれど、実際に「誰を雇うか」という最終的な判断については、わりと幅広く使用者に任されているんだ。これは解雇における厳しい制限とのバランスと言われているね。

 

Posted in 労働法図解

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