これから外国人を雇うなら技能実習か特定技能という話だったじゃないですか、あの話、もっと詳しく教えてもらえます?
ええ、もちろんです。
前回は「そもそも在留資格とは」って話から始めて、「外国人と建設業」みたいに総合的な話になってしまったので、今回は「技能実習と特定技能」にポイントを絞ってお話ししますね。
*3回に分けて解説する予定です。
お願いします。
目次
技能実習とは
まずは技能実習なんですけど、これは名前のとおり「実習」の要素が入っています。
現場で仕事をしながら、最長で5年かけて技能を身につけていってもらうので、実務経験なしの人を呼ぶこともできるんですね。
いわゆる「経験不問」というやつです。
ほうほう。
まあ、未経験でもやる気があればいいですよ。
ただ、日本語は通じるんですかね?
人にもよるでしょうけど、たいてい最初はぜんぜんみたいですよ。
やっぱり……。
あと、そもそもなんですけど、そういう人をどうやって探せばいいんですか?
技能実習生の受入
そこは仕組みができていて、まず、現地で人を集めて、日本語教育や航空券の手配なんかをしてくれる人たちがいるんですね。
実習生を日本へ送り出してくれるので、外国送出機関とか、単に「送出機関」なんて言ったりします。
へえ。
そういう会社を探せばいいんですか?
あ、いや、送出機関は日本に拠点があるところもありますけど、基本的には外国で活動しているんです。
なので、直接のやり取りはちょっとハードル高いですよね。
たしかに。
ですから、日本にある実習生関連の団体にお願いすることになるんですね。
こちらは「監理団体」といって、入国後に日本語や日本での生活ルールなんかの講習をしてくれたり、実習が始まってからも母国語での相談に応じてくれたりするんです。
へえ。
この監理団体が送出機関とやり取りしてくれるので、外国とのつながりがない小規模な会社でも、現地から外国人を呼べる仕組みになっているんですね。
なるほど。
なので、技能実習生を外国から呼ぶときは、送出機関と監理団体を通して、自社に入ってくるイメージになりますね。
ちなみに、外国人を受け入れる会社のことは、「実習実施者」という言い方をします。
ほうほう。
技能実習計画の認定申請
で、ですね、これは実習なので、単に日本で働いてもらうだけでは足りなくて、きちんと目標を決めて、それに向けて技能を身につけてもらわないといけないんですね。
目標って、どんな感じなんです?
これはずばり、技能検定*に合格することですね。
*「建設機械施工」と「溶接」は技能評価試験
ん? 技能士の試験ですか?
ええ。
ただ、実習生向けのものが用意されているので、それを受けてもらうことになります。
へえ。
合格できないと、どうなるんですか?
さっき、技能実習は最長5年と言いましたけど、これは3段階に分かれているんですね。
1年・2年・2年で1号・2号・3号って進んでいくんですけど、決められた技能検定に合格しないと、次の段階に進めないんです。
なるほど。
なので、きちんと検定に合格してもらえるように、計画的に指導していくことが求められているんですね。
ふんふん。
ちなみに、そもそも検定のない職種だと2号に進めないので、呼べたとしても1年で終わっちゃいます。
逆に2号以上に進める職種を「移行対象職種・作業」といって、今(2019年8月1日現在)の時点で建設分野は25職種38作業になってますね。
へえ、業種限定なんですね。
ええ。
で、技能検定のことも盛り込みつつ、「この人には、いつまでに、こういう作業を身につけてもらいます」って計画を作って、認定を受けておく必要があるんです。
でないと、入管で在留資格の申請を受け付けてもらえないんですね。
うーん、いかにもお役所って感じですねえ。
まあ、そこはノー・コメントで……。
ともかく、「実習生がきちんと技能を身につけられるのか」みたいな感じで、申請した計画が審査されることになるんですね。
へえ。
誰が審査するんです?
これはですね、「外国人技能実習機構」という、法務省と厚生労働省が作った団体ですね。
英語だと「OTIT」と省略されるので、「オティット」なんて呼ぶ人もいるみたいです。
ふうん、なんか細かく見られそうですね。
まあ、認定の基準はいろいろあるんですが、技能実習計画の作成については監理団体がノウハウを持っているので、そこはそんなに心配しなくてもいいと思いますよ。
ああ、そうなんですね。
実習の監査
で、いよいよ実習が始まると、「この計画がきちんと実行されているかどうか」を定期的に確認されていくことになります。
報告とか必要なんですか?
ええ、報告は最低でも年に1回は必要ですね。
でも、それより監理団体の監査や訪問指導に対応するのが大変だと思いますよ。
面倒そうですね。
3か月に1回は賃金台帳とか出勤簿とかも確認されるので、その対応が必要になりますね。
あと、1年目の実習生がいる場合は、月に1回は実習生の様子を見に来ることになっています。
賃金台帳のチェックとか、労働基準監督署みたいですね。
まあ、賃金の未払いとかが問題になるケースが多かったので、そのへんはしっかりしておかないといけないんですよね。
ほうほう。
「実習生には残業代を払わない」みたいな悪質なケースはだいぶ減っているみたいですけど、残業代の計算が間違っていることなんかはあり得ますよね。
ありそうですね。
それを監理団体が定期監査で見つければ、早めに修正できるじゃないですか。
でも、さっきの技能実習機構が立入検査をすることもあるので、そこまで気づかなかったとしたら、大ごとになっちゃうんですよ。
なるほど。
そう考えると、定期的にチェックしてくれたほうが助かるかもしれませんね。
ええ。
あと、実習生が技能をきちんと身につけているかどうかなんかも、監査のときにチェックしてくれることになっています。
へえ。
技能実習制度を維持するための費用
そんなわけで、実習生を呼ぶときだけでなく、実習が始まってからも監理団体には毎月の「監理費」を払う必要があるんですね。
いくらくらいなんです?
実習生一人につき5万円前後が相場みたいですね。
あと、監理団体を通したりして送出機関にも「管理費」を払うことになるんですけど、こちらは1万円前後みたいです。
そりゃあ厳しいですね……。
まあ、安い金額じゃないですよね。
ただ、監理団体を通して実習生を呼ぶやり方は「団体監理型」というんですけど、そうでないとしたら「企業単独型」というのになるんですね。
それだと毎月の費用がいらないんじゃ?
ええ、そうなんですけど、企業単独型で呼ぶ場合は海外に拠点がある会社とかでないと厳しいので、ある程度の規模でないと現実的じゃないんですよね。
なるほど。
じっさい、企業単独型で呼んでいる実習生は全体の数パーセントみたいですよ。
へえ、じゃあ、うちもやるなら監理団体のほうですかね。
まあ、そうなるでしょうね。
他にも細かいポイントはたくさんあるんですけど、とりあえず技能実習のイメージはつかめたかと思います。
ですかね。
<次回に続く>